天理vs健大高崎
自己最速、大会最速を更新!天理・達孝太が見せた復活劇
達孝太
1回戦は苦しみながら勝利した天理と同じく投手戦を制した強力打線をもつ健大高崎。どちらも甲子園の舞台での実績十分の強豪同士の一戦は、序盤から動いた。
初回、1番・内山陽斗のヒットを皮切りに3連打で幸先よく先制に成功すると、2回には9番・政所蒼太のタイムリーで2点目を奪った。その後は膠着状態が続いたが、7回一死一、二塁の場面で、4番・瀬千皓が左中間にタイムリーを放ちダメ押しの2点を追加。これで4対0とした天理は、エース・達孝太の好投で強打・健大高崎を封じ込めてゲームセット。完封劇でベスト8進出を決めた。
前回の宮崎商戦は完投こそしたが、達の調子が悪かったのはスタンドから見ていても十分わかる状態だった。そこからわずか中4日で健大高崎戦。チーム全体合わせて高校通算240本塁打を放っている超強力打線で、大会前から高く評価されていたチームに対し、達は何を感じていたのか。
「やっぱり各打者がしっかり振ってくるチームでした。だから恐る恐る投げる感じでしたが、打たれてもいいくらいの気持ちで投げていました」
重量打線相手に割り切った気持ちでマウンドに上がると、ヒットこそ2本だったが、捉えられるシーンもいくつかあった。「瀨や木下はじめ外野陣にしっかり守ってもらえました」とバックには感謝の言葉を出すが、全体を通して見ると、宮崎商戦に比べて調子が上がったことはよくわかる。
数字だけを見れば、ストライクの平均球速は141.4キロ、最速は148キロと、自分と大会最速記録を更新するという好調ぶりだ。達自身もこの日のストレートについては「コントロール出来ていたし、スピードが出ていた。だからどんどん投げて、追い込んでも真っすぐで押していきました」と話す。
ストレートを主体とした投球でテンポよく投げ込んでいったが、達の中でどんな変化があったというのだろうか。
「ずっと試合前日まで悩んでいました。けど、夜にシャドーピッチングをしていた時にテイクバックの感覚が良くなってきたんです。1回戦の時は大きくテイクバックを取っていましたけど、今日は突っ込む形のフォームになったことで、腕を振れるようになってきました」
以前の取材で達の中でフォームのポイントに、いかに重心を体の真ん中に置くことが出来るか。そしてどれだけ脱力した状態で腕を振り抜けるのかを重視していることを語っていた。その視点で言えば健大高崎戦では「145キロを投げているつもりだったので、148キロが出ていることを知ったときはビックリしました」と達にとってまさに理想的な状態だったと言える。
それでも自己採点は60点と辛口。「四球が多かったので、修正したいです」と次回に向けて課題を上げた。女房役の政所蒼太も「まだ本調子ではないです」と達同様に厳しいコメントだが、指揮官の中村監督は「バッテリーが良かった」と政所を含めて2人に及第点を与えた。
準々決勝はタレント揃いの仙台育英。強豪相手に万全な状態の達のピッチングは見れるのか。期待に胸を膨らませて楽しみに待ちたい。
(取材=田中裕毅)