仙台育英vs神戸国際大附
世代屈指右腕を上回るストライク率を誇る松田隆之介
松田隆之介
2回戦最初の試合は仙台育英と神戸国際大附。ベスト8をかけた一戦は、仙台育英が序盤から主導権を握った。
初回に仙台育英は5番・秋山俊。2回には9番・19047のスクイズで着実に点数を重ねると、3回にも3点を加えるなど5回までで8点を奪取。後半に入っても勢いそのままに6回は一挙4点、7回には3番・八巻真也のタイムリーで1点を奪うなど、終始リードを保った。
守っては先発・松田隆之介、渋谷翔、吉野蓮と繋いで神戸国際大附打線を5点に封じ込めて勝負あり。13対5で仙台育英が神戸国際大附を下した。
これで控え投手なのかと思うようなゲームメイクを仙台育英・松田隆之介は見せてくれた。6回投げて1失点と初の全国の舞台で堂々たる内容だった。
ストレートは最速142キロを計測し、120キロ前後で落ちるスライダーに、タイミングを外したチェンジアップの前に神戸国際大附のバッター陣が次々と空振り。そこに混ぜてくる110キロ前後のカーブで間を変えるなど6回で打者23人に対して奪三振8つと完投すれば2桁奪三振も十分に狙えた。
そして球数も93球と少ない。打者1人辺り4球程度で、1回に費やす球数も15、16球のみ。テンポ良く守り、攻撃にリズムをもたらしたと言ってもいいのではないだろうか。そんな松田について、指揮官の須江監督に試合後に話を聞いた。
「松田は練習試合でも調子が良かったですし、この大会で優勝するためには伊藤や古川だけではなく、松田をはじめとした投手で勝つことが必要だと思っていました。今日は良ければ2巡目まで投げて欲しいと思っていましたが、十分な働きをしてくれました」
伊藤、古川となる仙台育英の投手陣の柱と言っていい活躍だが、他の投手と比較して松田の先発抜擢には、ある能力と確率がチームトップクラスだという。
「ボールのキレが良いですね。球速表示以上のものがありますし、あとは大荒れすることなく試合を作れる。ゲームメイクの部分では松田にしかない武器だと思います」
仙台育英の投手陣はストライク率がベンチ入りの基準の一つとされており、最低ラインを55%に設定している。この試合の松田は球数93球に対してストライクは46球で、ストライク率49.7%であったが、昨秋までに関してはその数値がずば抜けていた。
「松田は秋の時点で練習試合を含めても70%と高い数字で周りの投手と比べてもダントツです。一冬超えてスピードアップしたことで、一時期悪くなりかけましたが、本人の中で落としどころを見つけて、この大会ではしっかりと持ち味を発揮してくれました」
松田本人も「持ち味は制球力なので、そこを意識しながらいかに出力を出すことだと思っています」と語っており、ブルペンでは常に実践を意識してコントロールを磨いてきたそうだ。その制球力がどれだけ優れているのか、その証拠にこの試合の四死球を見てみたい。
数字にすると一目瞭然だ。松田は6回投げて与四死球2つのみ。一方で神戸国際大附は6回までに4人の投手で8つとなっている。神戸国際大附はエース・阪上翔也のコンディションが整わず、控え投手で繋ぐ形となったが、エース以外の投手で試合のリズムを作れるか否かが1つの勝敗のポイントとなったのではないだろうか。
仙台育英はベスト4をかけて達孝太擁する天理と対戦することとなった。大投手相手にどういった試合を今度は見せるのか注目だ。
(取材=田中裕毅)