都立日野vs城西大城西

サヨナラ勝ちを収めた都立日野

　予選では都立城東を下し、都大会まで勝ち上がってきた都立日野。一方で都大会の初戦で、世田谷学園を倒してきた城西大城西。ともに実力を持ったチーム同士の一戦は終盤勝負となった。

　試合展開に入る前に、3人の投手を紹介したい。まずは城西大城西先発・坂田 真人。背番号10をつけたサウスポーだが、セットポジションから右足を高々と上げて軸足を若干曲げた状態で一本足となると、そのまま平行移動をして左腕を振り抜く。

　とにかく低めにボールを丁寧に集めるピッチングが光る左腕。加えて、低めから落とす緩いスライダー系のボールや、微妙に変化するカットボール系のボールをイニングによって使い分ける投球術の幅の広さも武器。その結果、都立日野は三振やゴロアウトの山を築かされ、なかなかチャンスを作れない状況となった。

　今年の城西大城西は投手層の厚さがウリだが、その中でも坂田は引き出しの多さと安定したピッチングがストロングポイントと言っても過言ではないだろう。5回で降板をしたが、「もう少し引っ張っても良かったかもしれない」と山崎監督も坂田の好投を称賛した。

　2人目は6回からマウンドに上がったエースで主将の渡邉 寮。世田谷学園を1点に抑えた渡邉は身長169センチとあまり身体は大きくないが、セットポジションからゆったりと動き出し、着地と同時に鋭く体をひねったところから、切れのあるボールを投げ込んでくる。変化雄も緩急を利かせたカーブに、鋭く変化するスライダーと各ボールの質が高い。

　さらに、コントロールも良いためストライクゾーンにボールが集まり、テンポが良い。エースたる所以がわかる投球を見せてくれた。

　最後は都立日野で10回完投のエース・木下 孔晴。嶋田監督も「今年は彼と心中するので、頑張らせました」というほどの信頼を置かれたエース。ノーワインドアップからスムーズに動き出していき、左腕でリードをしながら重心移動。開きも抑えられているため、最後に右腕が振り下ろされて来るような感覚をさせるフォームが印象的だが、そこから伸びのあるストレートを軸に城西大城西打線を抑えた。

　両チームとも与四死球がわずか3つと安定した投球が光ったこともあり、引き締まったゲームとなった。

城西大城西・渡邉 寮

　0対0で迎えた4回、城西大城西は3番・田口 耀の四球と4番・加藤 聖大のヒットでチャンスを作ると、6番・松本 耕大のタイムリーで先制。さらに7回には7番・小柳 浩紀と9番・湊谷 航希がヒットでチャンスを作ったところで、1番・陸野 翼にタイムリーが飛び出し、2点目を奪った。

　しかし都立日野も黙っていない。2点ビハインドで迎えた9回に意地を見せる。
4番・島 叡司のヒットと盗塁で無死二塁とすると、5番・廣岡 太平のタイムリーで1点差。そして打線がつながり無死満塁から8番・長町 真生の犠牲フライで都立日野が同点に追いつく。

　勢いそのままに10回、都立日野は3番・樋口 恵斗の三塁打で勝ち越しのチャンスを作ると、5番・松浦 壱祥の内野安打でサヨナラ。終盤の劇的な勝ち方で都立日野がベスト16へ駒を進めた。

　これでベスト16進出となった都立日野。嶋田監督は「ミスからの失点で嫌な流れでしたが、最後は運に助けられたという感じですかね」とコメント。旧チームは国士舘と接戦を演じながら、あと一歩届かなかった。その時を知る樋口主将が強豪のレベルや先輩方から教わったことを伝え、高い意識をもって取り組みながらチームを作り上げてきた。

　次戦は関東一。樋口主将は、「圧倒されたらダメなので、都立の意地を見せられればと思います」と意気込みを語った。

　一方、あと一歩で勝利を逃した城西大城西。山崎監督は「後半にこうなることを予想はしていましたが、予想通り強かったです」と試合を振り返った。だが、先発・坂田や渡邉が打ち取った当たりを確実に処理する野手陣の守備の堅さは試合中光った。春以降も、投手中心の守備からの野球が見られることを楽しみにしたい。

　主将の渡邉は、「また坂田が良い形で抑えていたので、続こうと思いましたが、最後に自分が踏ん張り切れなかったので、自分に責任があるかと思います」と振り返った。この悔しさをバネに一皮むけた姿を見られることを楽しみにしたい。

（記事＝田中 裕毅）