東邦vs加藤学園
終盤に逆転された東邦だったが、8回に再逆転で加藤学園に辛勝
背番号6で先発マウンドに立って好投した東邦・三浦君
昨秋の秋季東海地区大会ではベスト4に進出して、明治神宮枠の恩恵でセンバツ初出場を果たした加藤学園。中止になったセンバツの救済措置として開催された夏の甲子園交流試合で初めて甲子園に姿を見せた。その舞台で活躍した選手も何人かが残ってのこの秋となった。この秋は静岡県3位での進出である。
また、東邦は平成最後となった一昨年の選抜で全国制覇を果たした。当時の森田泰弘監督が今春に勇退して、山田祐輔監督が就任。夏は、学校内にコロナ感染者が出たということで大会半ばの辞退という悔しい思いをした。それを乗り越えてこの秋は県大会準優勝での進出となった。
東邦は背番号6の三浦君が1番投手として先発。「5回まで持って行って、知崎に繋いでいかれればいいと思っての起用」という山田監督だったが、立ち上がりは制球に苦しんで初回は2四球を与えたりもしたが、3回までは無安打。4回に植田君に二塁打され初安打を浴び、宮崎君のバント安打で一三塁のピンチとなったが、けん制で刺すなどもあって何とか凌いだ。
ピンチをしのいだ東邦はその裏、代打の都合もあって加藤学園の2番手となったエースナンバーの石山君に対して、6番落合君の2ラン本塁打で先制する。
ただ、加藤学園も食い下がって5回に平尾君、水田君と8番、9番の連打でチャンスを作って一死満塁から併殺崩れで1点を返す。こうしたしぶとさ、粘り強さは近年の加藤学園の持ち味とも言えよう。結局、三浦君は5回の二死まで投げてエースの知崎君に繋ぐこととなった。
しかし加藤学園は知崎君に対しても7回、先頭の水田君が四球で出ると好リードオフマンの太田君がこの日の自身初安打でつないで一二塁。杉本君がきっちり送って一死二三塁。ここで米山学監督の信頼も最も高い植田君が三遊間を破り二者が帰ってついに逆転した。さらに、8回には「下位に置いているけれども、パンチ力はあるので一発の力はある」という平尾君が左翼スタンドへ運ぶソロアーチを放って2点差とした。
何とか逃げ切りたい加藤学園。8回のマウンドは3人目の左腕サイドの変則タイプの船橋君だったが、その代わり端の初球を内田君に左翼席に持って行かれてたちまち1点差。さらに、柳瀬君の2塁打に四球で4人目岩間君に交代。しかし、上田君の左前打で同点となる。そして、5回途中からリリーフして9番に入っていた知崎君自身が中前タイムリー打。結果的にはこれが決勝打となった。
「知崎は投手としてもそうだけれども、打者としても勝負強いところがあって、県大会もそうだったけれども、ここというところで打っている」という山田監督の「何とかしてくれるだろう」という期待に見事に応えた。そして、9回のマウンドも、二死から佐野君に二塁打されたものの無失点に抑えて逃げ切った。
「8回に逆転された時にも、選手たちは守備からベンチに戻ってきた時に元気で暗さはなく、積極的に行けると感じた」と山田監督が言うように、その直後に見事にひっくり返した。
自分たちの試合の形で勝利を手繰り寄せていながら、再逆転で失った加藤学園。試合後の米山監督は開口一番、「悔しいですね」と一言。「今年のチームは、投手の柱がいないので継投で行こうということで、私としても早め早めの継投で、攻めていこうという思いでした。コントロールがいいので、樋口から行ったんですけれども…。結果論なので何とも言えませんが、こういう投手起用は予定していましたから、生徒の責任ではないです。ただ、夏へ向けての課題としては、やはり去年の肥沼のような投手の柱を作っておくということになるのでしょう」と、米山監督は、この冬の目標を見据えて意識を切り替えていた。
(取材・写真=手束 仁)