都立小山台vs帝京
都立小山台は投打で帝京に完勝。木暮、森村のバッテリーの大活躍で6回コールド勝ち!
ホームランを打つ森村輝(都立小山台)
2018年から2年連続で決勝進出を果たしている都立小山台。今年の東東京王者の帝京との対決が2回戦で実現。[stadium]駒沢球場[/stadium]の内野スタンドはほとんど埋め尽くされていた。
都立小山台は速攻劇を仕掛け、試合の主導権を握った。
1回表、ボールが走らない植草翔太(2年)の立ち上がりをついて、1番・濱口隼が遊撃内野安打で出塁。その後、一死満塁から5番・新井晟矢の右前安打で1点を先制。2回も無得点に終わったが、3安打を放ち、じわじわと帝京を追い詰める。
そして一気に爆発したのが3回表だった。
4番・森村輝が、打った瞬間に本塁打とわかる特大本塁打で2点目を入れる。森村はこれで高校通算13本塁打目。なんと新チームになってから10本目の本塁打だ。180センチ75キロと強豪私学の選手に見劣りしない体格。そのパワーを生かすために取り組んできたのがフォームの意識の変化だ。上半身主導の動きだったフォームを下半身でタイミングをとることを意識した。また軸足に意識をおいてスイングすることで突っ込みを少なくなり、インサイドアウトのスイングを実現し、的確にボールをとらえることができている。
スローイングタイム2.00秒と突出して速いタイムではないが、ベース上でしっかりと伸びていく球筋は魅力的で、投げれば、140キロ近い速球を投げるという。福嶋監督も「大学で続けられる選手」と評価するが、これまで大学で続ける都立小山台出身の選手と比べてもトップレベルのポテンシャルを持った選手だ。
この一発を機に勢いに乗った都立小山台は二死一、三塁でダブルスチールから悪送球を誘い1点を追加すると、さらに1番・濱口隼の左前安打と、2番・西田宗弥の適時打で6対0と突き放し、さらに6回表にも4番・森村の遊撃内野安打からチャンスを作り、5安打を集中させ、10得点を記録した。
そして投げては木暮瞬哉が好投。右サイドから130キロ前後ながら、両サイドにしっかりと投げ分ける制球力の高さがあり、何より110キロ前後のスライダーが低めに落ちる。甘い球種がほとんどなかった。リードする森村も「コントロールもよかったですし、何よりスライダーもストレートと見分けがつきにくく、打ちにくかったと思います」
140キロを超えるストレートはないが、引き出しが多彩で、コントロールも、メンタルも安定しており、全国的にみても、右の技巧派投手としては都内では上位に入る投手ではないだろうか。そして福嶋監督が「振れていた」と話すように、各打者も技術的に高レベル。短い練習時間の中でもしっかりと課題を把握し、効率的なスイングができるよう工夫している姿がうかがえた。
3番ショート・武藤闘夢(帝京)
夏の東京城北戦の敗退は福嶋監督、選手たちにとっても痛恨の負けだった。二度とあんな負けをしたくない思いで練習を重ね、帝京、日大三の強豪ブロックが入ったことについても「わくわくしたんです。だから選手たちには決勝戦のつもりで臨もうと話した結果がのびのびとやれているのかもしれません」と、ポジティブな心境で帝京戦に臨むことができていた。
実力的には、県などを勝ち抜いて地方大会に進出する公立校と比較しても十分負けていないチームだといえる。次は日大三。名試合が期待できそうだ。
一方、敗れた帝京は頼みの植草翔太、安川幹大が誤算だった。この2人はやはりストレートが走ってナンボの投手。長身右腕の植草は120キロ後半(最速131キロ)にとどまり、安川は130キロ前後。快投を見せた聖パウロ戦のボールの切れ味は感じられない。都立小山台の各打者が全く恐れることなく振れていたのだ。
現状の球威では、春でも通用しない可能性が高い。そこそこではなく、別人のような成長を見せていきたいところ。スピードがすべてではないが、やはり右の本格派は、平均球速が低い投手は、よほどコンビネーションがうまい配球をしない限り、通用しない時代となっている。
また、バックも練習や一次予選から緊張感があり、精度の高い守備を見せていたが、この日は3失策。すべてが失点につながった。打線については内角を突かれてしまい、対応ができず、攻撃面もちぐはぐだった。
前田監督は「やり直し」と語るように、夏まで時間をかけてチームを作るしかないだろう。
(記事=河嶋 宗一)