市立川越vs城西大城西
市立川越は期待していた投手陣に復調の兆し、城西は本大会へ向けて好感触
新井監督の期待に応えた好投を見せた市立川越・石田君
10月になって埼玉県は既に県大会が終了、東京都は一次ブロック予選が終わり都大会が今月中旬から始まるという日程となっている。従って、この秋ということに関して言えば、東京都の城西大城西はこの後に公式戦を控えているが市立川越は来春へ向けての再調整という形になる。
そんなチーム事情の異なる状況だが、今の段階で両チームがそれぞれトライしてみたいことにチャレンジして、スコア上も競り合いとなり見ごたえのあるものとなった。
城西大城西を昨年から率いることになった山崎警監督は、市立川越の前身川越商の出身である。その後は神奈川大に進み、さらには社会人野球の強豪西濃運輸を経て埼玉県教員となり飯能南、富士見、ふじみ野などで指揮を執っていた。富士見時代にはチームを春季関東大会にも導いた実績がある。
そして、昨春から新天地として城西大城西に赴任している。川越商出身という縁もあって、埼玉県勢との交流も多いのだが、ことに母校に当たる市立川越とは何回か交流試合を組んでいる。
秋季大会に関しては、関東大会のある埼玉県などの関東各県と東京都はいささかスケジュールが異なる。9月の一次ブロック予選を勝ち上がった城西大城西は、今月の東京都の本大会を控えている。「何となく、気持ちの作り方が難しいですね」と、戸惑いを感じながらも、次の大会があることへの希望は大きい。「本来予定していた4番がケガで故障している」ということもあり、打線はもう一つ破壊力がないのはもどかしいところでもあろうか。
本塁打を放ちベース一周をする市立川越・高橋翔太君
それでも2試合目に投げた、主戦投手として期待している渡邉寮君が終盤制球を乱して掴まったものの、7回までは5安打1失点のみで好投。山崎監督もこの渡邊君に加えて、坂田君や竹本君の左腕投手が噛み合っていけば都大会もある程度までは十分に戦えるという感触を得ているようだ。もっとも、坂田君は第1試合で3回先発の川邉君をリリーフした途端の代わり端を高橋翔太君に本塁打された。その後は抑えていただけに、試合の入り方に課題を残したとも言えようか。竹本君は、短いイニングならば任せられる存在となっているようだが、不用意にストライクを取りに行って長打を浴びた7回の失点は反省材料となった。
市立川越では、大会ではほとんど出ていなかったという古寺君が8番で起用された最初の試合では5打数4安打。当たっているので1番で起用された2試合目でも中前打を放ち二盗、三盗と決めて存在をアピールした。市立川越としては大会が終わった後だが、もう一度チームを作り直していくことになる今の時期の練習試合では、こうして起用された試合できっちりと結果を残していくことは、大事なことであろう。
5番で起用された20285君も1試合目では右へ二塁打、左へ本塁打など右左打ち分けて3安打して2打点。2試合目ではリリーフ投手として8回からはマウンドに登ったが、2者を抑えた後、当たっている上村君の打球が投手返しとなり腕に当たって、大事をとって降板となったのは気の毒だった。
この試合は、市立川越が終盤に粘りを見せて逆転したが、新井清司監督は、「いい試合になったよね。普通だったら、あのまま行かれちゃうところなんだけれどもね。何だかよく粘ったよね」と喜んでいた。そして、それ以上に喜んだのが第1試合での石田君の好投だった。「ずっと良くなかったんだけれども、これだけ投げてくれるといいね。やっぱり、アイツを軸にしていかないといけないと考えているから」と言うように、上村君に本塁打こそ浴びたものの、6回までは1安打無失点で120球ほど投げて3安打1失点で完投したのは十分に及第点であろう。石田君は打っても4番で身体もしっかりと出来てきており、体幹が強いなという印象である。
城西大城西・渡邉寮君
また、2試合目では右横手投げの藤井君が7回を粘り強く投げた。スーッと沈んでいくようなスライダーも有効だった。7回を投げて8三振は見事だった。ただ、少し甘く浮いてしまうと、須藤君に本塁打されたようになってしまうので、そこを意識していくことになる。
ところで、校舎に隣接した形ながら、ほぼ専用球場のような形で使用出来ていた市立川越の野球部グラウンドだが、老朽化が進んできたということで、今年の12月から来年5月いっぱいまでの予定で、防球ネットやスタンドなどの改修工事になるという。「来年は5月までは、練習試合は全部遠征になるし、その間の練習も工事の空いているところを使ったり、ジプシー練習になっちゃうよな」と、新井監督は来季の予定にはちょっと頭を痛めていた。
また、この試合では、試合前のノックは両チームが一緒になって合同シートノックを行っていた。市立川越の甲原史朗コーチが主に打っていたのだが、「いろいろなノックを受けることで、選手たちもいろんなケースを経験出来る」ということで、試合前に話し合ってこうしたスタイルを導入しているところも最近は増えてきているようだ。
(取材・写真=手束 仁)