北海vs帯広農
タイプの違う3投手が好投した北海が帯広農の繋ぎの攻撃を封じる!
北海先発・吉野龍生
2016年の夏の甲子園で準優勝に輝いた北海。対するは今夏の甲子園交流試合で健大高崎から白星を掴んで見せた帯広農。甲子園を知る両チームの試合は前半、膠着の試合展開となった。
先にマウンドに上がった北海の吉野龍生はキレのあるボールを投げ込む速球派右腕。セットポジションからスムーズな動き出しでモーションに入り、鋭い回転に合わせて上から右腕を振り下ろすオーバースローの本格派投手。ストレートはもちろんだが、縦に変化するカープ、スライダーを織り交ぜる投球で帯広農打線を封じ込めた。
一方の帯広農は背番号11をつけた水口智文。セットポジションから動き出していき、少し右肩を下げるような形で、重心移動をしていく。ただ、重心移動が少し不十分なように感じられ、上半身の力を利用したフォームに見えた。ただリリースの瞬間に力強さを感じられ、切れのあるストレートが投げ込まれていた。
初回は緊張からなのか、低めにボールを叩くことが多かったが、ショートの佐伯柊主将をはじめとした野手の守備に助けられて4回まで無失点できていた。
甲子園交流試合を経験した佐伯主将。守備位置はあくまで基本的な定位置で低く構えるが、多くの選手が取り入れるスプリットステップを実践することで、3回には北海の3番・杉林蒼太のライナーをダイビングキャッチするなど、球際の強さに合わせて一歩目から素早い反応を見せているのが印象的だった。
均衡状態の試合だったが、5回に北海がゲームを動かす。一死から1番・宮下朝陽がレフト前、2番・大津綾也が右中間への二塁打でチャンスを作ると、3番・杉林のタイムリーで2点を先制した。
勢いそのままに6回には9番・小原海月、2番・大津のタイムリーで2点を追加して4対0とした北海。4点リードに広げると、2番手・中井侃樹、3番手・立花海空と繋いで帯広農に的を絞らせずにスコアボードに0を並べていきゲームセット。4対0で北海が帯広農を下した。
帯広農ベンチ
今大会では5名の投手がベンチに入っている北海。今大会は1週間で5試合のハードスケジュールの中で球数制限もある。そこまでを見越してのことだが、平川監督は難しさを感じ取っていた。
「負けたら終わりなのが高校野球なので、自分は今まで先のことを考えずに一戦必勝で戦ってきました。ですが球数制限に合わせて1週間で5試合を戦いますので、先を見据えながらの投手起用になります。ですので、今までとは違う投手起用になります。非常に難しいです」
選手の性格やプレースタイルなどを見定めたうえで、タイプの違う複数の投手をベストな起用方法で登板させていく。そうしたところにも難しさを感じながらも、例年は投手の柱を1人を作る形ということで、今年は注目左腕・木村という中心投手を柱にして育てながらも、吉野などの複数投手が揃うことで投手層を厚くすることができた。
2番手のサウスポー・中井は左のオーバースローとして、セットポジションから縦回転のフォームからキレのあるストレートに落差の大きい変化球を駆使する。3番手・立花は右のサイドハンドで真っすぐとスライダーのコンビネーションで打者を翻弄。吉野、中井にはないストライクゾーンを広く使った投球が持ち味の投手だ。
5人の投手を上手く起用して今大会で結果を残すことができれば、投手王国・北海を印象付けられるだろう。次戦の戦いも注目だ。
敗れた帯広農は甲子園への道が閉ざされたが、バントといった小技など堅実的な野球は新チームも健在だった。しかし旧チームと比較すると、聖地でも見せた打線の繋がりを欠いてしまった。この事に関して、佐伯主将は春までの課題に掲げた。
「バッティング練習からゴロやライナー打つように心がけ、試合でも速球派投手と言対戦すれば短くバットを持ったりバスターをやったりしてきましたが、繋ぐ打撃ができませんでした」
今夏の甲子園を経験した選手が何人か残り、チーム作りなどの雰囲気作りは先輩たちから引き継げているとのこと。武器だった繋ぎの打撃に磨きをかけて、春に再びバッティングで躍進を狙う。
(取材=田中 裕毅)