成章vs大府
伝統の公立の雄対決は、成章が中盤で逆転して大府を下す
成章・仁枝瑞貴君
振り返れば12年前の第90回となった選手権記念大会、東愛知大会で甲子園をかけた決勝を戦った両校である。その時は、大府が勝って甲子園を決めた。大府は、かつて槇原寛己(巨人)、赤星憲広(阪神)ら、プロ野球選手も何人か輩出している。また、その年の春は21世紀枠の代表として甲子園に出場していたのが成章だった。エースには今年ノーヒットノーランを達成したヤクルトの小川泰弘投手がいた。
そんな実績のある知多地区と東三河地区を代表する公立の雄同士の対決と言っていい。
大府は、近年知多地区では躍進著しい日本福祉大附や東浦などの勢力にやや押されていたというところもなきにしもあらずだった。しかし、この秋は横須賀、知多翔洋、半田に快勝を続け、トーナメント決勝でも日本福祉大附を3対1で下して1位での県大会進出となった。シードで迎えた県大会でも初戦で同地区の半田工を下している。
一方成章は近年、少子化と田原市など地域の過疎化が進んでいく中で、現実問題としては部員集めにも窮するようになってきたというのが現実だという。そんな中で、河合邦宗監督は「今年のチームは、久しぶりに粒が揃ったという実感があるので期待感も高い」という思いで挑んでいる。東三河地区予選では3回戦で豊川に競り負けたものの、順位決定戦では夏季大会で敗れた国府に大勝して県大会進出を決めた。県大会では1回戦で小牧工に完封勝ち。前日の2回戦でも三好を下しての進出である。
先制したのは大府で初回に鈴木創大君の安打と3四球の押出で1点。さらには、2回に二塁打した9番椎野君を1番赤田君が左前タイムリー打で帰す。ここまで、成章の先発仁枝君もやや制球が不安定で、そこを大府打線につかれたというところもあった。しかし、以降は徐々に立て直していく。「上半身に力が入りすぎていたので、そこを修正していくように下半身の使い方を考えるように指示した」と河合監督のアドバイスを受け、試合中に投げながらそれが出来ていくところに仁枝君の質の高さがある。
こうして仁枝君が踏ん張っている間に何とか追いつきたい成章。5回に先頭の8番鈴木彬仁君が右中間二塁打して反撃の口火を切る。伊藤君の死球後バントで一死二三塁としたところで、河合監督は代打村田君を送り出す。村田君は起用に応えて左前打で2者を帰して同点。大府の野田雄仁監督はここで先発左腕毛呂君を諦め小林大輝君を投入。しかし、その代わり端を原岡君が捉えて右前打で、二盗して進んでいた村田君を帰して一気に逆転した。
7回にも成章は河合監督をして曲者という9番伊藤君が四球で出ると盗塁、振り逃げ暴投、盗塁、死球で満塁とする。ここで、白井君が左前へポテン安打、仁枝君は左前打。さらに鈴木颯海君の右犠飛も出てさらに3点を加えた。
尻上がりに自分のペースを作っていった仁枝君は、8回に1点は失ったものの、リードもあって余裕持って投げ切った。
河合監督は、「苦しい戦いでしたが、仁枝がよく粘って投げてくれた。コントロールがいいので、そんなに崩れないので、ある程度修正できれば安心は出来る。何とか、強豪私学を一つでも2つでも下していきたい」と、次の至学館戦を見据えていた。
大府の野田監督は、「7回などは、やらなくてもいい点を与えすぎました。まずは、投手を含めて、細かい守りを作り直していかないといけません。終盤に、もう一度チャンスは来ると思っていましたが、8回も点差がありすぎて、ただ打つだけでしたからどうしようもありませんでした」と残念がった。
(取材=手束 仁)