日本福祉大付vs愛知黎明
辛抱して我慢した日本福祉大附、8回に貰ったチャンス生かして一気に逆転
日本福祉大附・モイセエフ君
愛知黎明の金城孝夫監督は中京大を経て、愛知黎明の前身の弥富で指導していた。その後、故郷沖縄県で沖縄尚学を率いてセンバツ優勝を果たし、長崎日大へ異動した後も大瀬良大地投手などを擁してベスト4まで導いたという実績がある。
また、日本福祉大付の山本常夫監督は、甲子園での審判員なども経験した後、鹿児島県で神村学園を率いて何度か甲子園出場を果たした実績もある。日本福祉大付の監督に就任して3年目となったが、ようやくチームにも指導理念が馴染んできたようだ。ここのところ着実に結果を残してきており、徐々に知多地区の雄としての位置を築きつつある。
そんな、九州地区で実績を挙げてきた名将同士が愛知県で尾張と知多の新鋭校を率いての戦いというところでも興味深かった。
先週の雨で、日程がずれ込んでしまった試合。愛知黎明は土曜日からの連戦となったが、シードの日本福祉大付の県大会はこれが初戦。ちょっと待たされたかなという感もあったところだ。
前日の新川戦で大勝した勢いもあってか、序盤は愛知黎明のペースだった。
初回、愛知黎明は失策と四球の走者を重盗で進めて二死二三塁から5番富田君が三遊間をしぶとく破って先制。3回にも二塁打した亀井君をバントで進めると、またしても富田君が三遊間を破って2点目をもぎ取る。
愛知黎明の先発森君は、タテのカーブを上手に駆使しながら、打たせていく投球で日本福祉大付打線を交わしていく。こうして7回まで、日本福祉大付打線は5安打散発で無得点に抑えられていた。森君は、7回途中で一旦外野に下がった。愛知黎明金城監督は逃げ切り態勢で西川君を投入してきた。
8回から日本福祉大付は2人目としてロシア人のモイセエフ君を投入した。腕と足の長い体型だ。モイセエフ君は先頭の西川君に安打を許し、三塁まで進めるが、スクイズ三振併殺で何とか切り抜ける。そしてその裏、一死後3連続四球があって一気に流れが変わった。この場面で8番に入っていたモイセエフ君が右前へはじき返して2者が帰って同点打となる。
さらに日本福祉大付は、再びマウンドに戻ってきた森君から四球と失策絡みで4点を追加。すっかり試合の流れを自分たちのものとした。そして9回もモイセエフ君が持ち味のスライダーを巧みに使って失策はあったものの愛知黎明の反撃を抑えた。
序盤に1点ずつ取られはしたものの、その後を何とか松山君が粘りの投球でこらえていたのも日本福祉大付としては大きかった。そして、「まだまだバットは振れていないけれども、何とか辛抱して我慢していったことで、8回逆転出来た」と山本監督は、粘りの勝利を強調した。
「お互いよく手の内は知っているんですよ。実は、つい2週間前も練習試合しているんですよ。だから、こっちの手の内も読まれて、一三塁から2度も刺されていますしね」と苦笑していたが、ここというところで粘り切って堪えての勝利。まんざら悪いものではないということであろう。
そして、「まだまだ、もっとバット振らせますよ。こんな田舎からでも、打てるチームを作っていかれることを示したい」と、打てる日本福祉大付を目指していくという。
(取材=手束 仁)