試合レポート

享栄vs愛知

2020.09.12

乱戦の末の延長戦、最後は11回、享栄がサヨナラ2ランで決着

享栄vs愛知 | 高校野球ドットコム
サヨナラ2ランを放った堀尾君

【熱戦の模様をギャラリーでチェック!】

 中京大中京時代には2009(平成21)年に全国制覇を果たしている大藤敏行監督が母校を辞して異動してきて3年目となる享栄。「今年の2年生は能力としては高いよ。投手でも140キロ越えるヤツが何人もおるからね」と、新チーム結成前からこのチームには高い期待を持っていた。その言葉通りに、名古屋市予選は快調に勝って1位通過。満を持しての県大会初戦である。2000年春以来の甲子園を目指して、古豪復活の期待を担っている。

 対する愛知は、この秋の新チームから飛田陵佑監督が就任した。県大会初戦は半田に対して苦しみながらもワンチャンスで逆転している。学校としては、かつては春4回、夏2回の甲子園出場実績もある。そういう意味では、名古屋市のかつての強豪対決と言ってもいいカードとなった。

 そんな試合だったが、展開としては思わぬ乱戦になっていった。

 今大会前評判の高い享栄だが、先制したのは愛知だった。

 初回、愛知は簡単に二死となった後、3番・中神君が左越二塁打すると、続く光森君も左前打で二塁走者を帰した。何だか、あっさりと愛知が先制したという印象だった。その裏、享栄は3四球で一死満塁としたがあと一本が出なかった。

 しかし享栄は2回、大石君の左翼ポール直撃のソロホーマーで追いつく。そして試合は、ここから乱戦気味の展開となっていく。享栄はさらにポテン安打と彦坂君のタイムリー打で逆転すると、3四球や佐久間君、吉田君の中前へのポトリと落としていく連打に野選などでこの回8得点。

 さすがに、勝負強いかと思わせた享栄の攻撃だったが、濵田君は2回こそ3人でピシャリと抑えたが3回、清水君に二塁打が出ると、小林君のバントが安打となり、澤野君のタイムリーに光森君の二塁打などでこの回4点が入り3点差となる。その裏の享栄は無死一三塁から彦坂君の左越二塁打で2点を奪い、試合は点の取り合いとなっていく。



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本塁打を放った愛知・小林君

 愛知も4回、4四死球に飯田君のタイムリーなどで3点を返して2点差と追い上げる。

 5回に享栄は押し出しで、愛知は6回に澤野君、中神君、赤毛君らの安打でと、それぞれ1点ずつ取り合った。そして8回、愛知は二死走者なしから澤野君の二塁打と飯田君の右中間三塁打で1点差とする。ここで大藤監督は2人目の菊田君を諦めて3人目として肥田君を投入するが、その直後の牽制球がボークとなってついに愛知は同点に追いついた。それでも、その後は肥田君が何と変え抑えていき、愛知も4人目の左腕・堀君が8回から登板して抑え、試合はついにそのまま延長にもつれ込んだ。

 延長に入って享栄は肥田君、愛知は堀君の投げ合いとなったが、愛知は10回、二死から9番・小林大悟君が左翼へソロホーマー。これで決着かと思われた。ところが、享栄も粘る。その裏、死球の走者を暴投で進め犠打と犠飛で再び同点とする。

 そして11回、二死走者なしから4番・真鍋君は四球となった。続く堀尾君は、この日4人目の選手として左翼手で入っていたが、その初打席が左翼へのサヨナラ2ランとなった。

 何とか勝ちをもぎ取った形となった享栄。大藤監督は試合後、安堵の表情を浮かべながら、「貰った点も多かったけれども、あげた点も多かったからね。こういう展開にはなるわな」と苦笑していた。それでも、「後半はいいプレーも出ていたからね。ただ、試合展開としては、同点に追いつかれたところで負けとる。それは踏ん張れたのはよかった。リードされた後の10回もよく追いつけたと思う。こういう試合を勝てたことはやはり大きい」と思いを述べていた。

 それにしても、享栄投手陣は出てくる投手がいずれも球速140キロ以上を表示。4人目の竹山君に至っては最速147キロをマークしていた。そのあたりの素材力に関しては前評判通りだったとも言えよう。

 一旦は大逆転勝ちかと思われた愛知だったが、最後には享栄にもう一度ひっくりかえされた。飛田監督は、「結果的には序盤の失点は大きかったのですが、練習試合でも序盤に失点してその後、食いついていくという形は多かったので、よくみんなでつないで行けたと思う。投手が粘って試合を作っていって、8回に同点に出来たことも大きかった。試合の中では選手たちの成長も感じられ、負けはしましたけれども、次へつなげられる負けにはなったのではないでしょうか」と、次へ向けての展開を考えて前向きだった。

(取材=手束 仁

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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