大府vs半田商
大府が力のあるところを示して、5回コールド勝ち
初回、先制の二塁打を放った大府・高柳君
知多地区の古い高校野球ファンにとっては、懐かしいというか、かつては知多地区を代表する強豪の両校でありライバル対決とも言われたカードである。ただ、時代の流れの中で、商業校の女子生徒の極端な増加と男子生徒の普通科指向もあって、半田商は男子生徒が激減。かつては広島カーブの長谷川良平元監督やロッテに入団し新人王も獲得した三井雅晴投手を輩出した伝統の野球部そのものも存続が危ぶまれるくらいになってしまった。それでも、野田昌史監督らが尽力して何とかチームを維持してきた。
一方の大府は、近年は地区内でも他校の躍進もあるものの、甲子園経験校としての自負もある。2008年の記念大会には東愛知代表として2度目の夏の甲子園にも出場。2016年夏にもベスト8に進出。知多の雄としての存在感は十分に示している。
野田雄仁監督はこの春、保健体育教員として学校保健主事という立場で、学校のホームページなどで生徒たちに向けて、コロナ対策を発信していかなくてはいけないという役割も務めながら、夏へ向けてのチームの意識も高めてきた。学校内では新型コロナウイルスと戦っていく最前線にも立たされていながら、3年生たちの最後の夏へ向けての思いも育んできた。そうした思いも重ねながらの試合となった。
大府は初回に無死一二塁から高柳君の左翼線二塁打で2点を先取。2回にも失策と高柳君のタイムリーでさらに2点。3回にはスクイズで加点すると、4回には打者14人、4本の二塁打などで10点を奪った。今年の大府は3年生20人とマネージャー1人。図らずも全員がベンチ入りして戦うことが出来たのだが、野田監督がことのほか喜んだのは、代打で起用した杉山君の二塁打だった。杉山君は、1年の秋に打球が顔に当たり入院する大ケガを負った。そこから、頑張ってカムバックしてきた。そんな苦しい思いをしてきた選手が、最後の舞台で起用に応えてくれたからだ。
また、先発した佐々木岳君もこの冬から本格的に投手になった選手で、初めての公式戦。そこでしっかりと自分の投球をすることが出来たのも日頃の努力のたまものだと評価した。
「こういう試合にはなってしまいましたけれども、やはり初戦は緊張していましたね。それでも、大きなミスもなく、しっかり戦えたと思います」と、野田監督はミスがなかったということが一番よかったという思いだった。
また、力負けに放ったものの、半田商も失策などでボロボロ崩れていくという形ではなく、しっかり戦って敗れたということなので、最後の夏としては自滅ではなかったことは、評価されていいであろう。
(取材=手束 仁)