試合レポート

小坂井vs豊橋西

2020.07.05

「生徒の笑顔が見られてよかった」そんな素敵な試合の師弟対決

小坂井vs豊橋西 | 高校野球ドットコム
勝利に笑顔の小坂井選手たち

 夏の選手権大会は中止になってしまったが、各地でその代替えとなる大会が催されることとなった。対応の早かった愛知県は、全国に先駆けるような形で7月最初の週末から開催されることになった。ただ、前日は雨の影響で一部の球場では中止となってしまった。この日の[stadium]豊橋市民球場[/stadium]の試合も、前日は流れてしまい順延となった試合でもある。

 今年の夏は特別な夏である。それでも、立ち向かう選手はいつもと同じ夏のような意気込みで挑んでいる。そしてまた、それを導いてきた指導者たちもまた、格別な思いに違いない。

 小坂井の近藤至彦監督は豊橋西の林泰盛監督の時習館時代の監督でもある。つまり、この試合は師弟対決という試合でもあるのだ。

 豊橋西の林監督は前任の豊橋工時代には、投手を中心とした好チームを作り上げて2015年春には21世紀枠代表として悲願の甲子園出場も果たしている。その折には、近藤監が準備期間から、林監督にさまざまなアドバイスをしたりセンバツ前の練習試合の相手や会場を手配するなど尽力してきた。

 林監督はその後に豊橋西に異動。今の3年生とともにチームを作り上げてきたのだが、この代はわずか4人。手作りでグラウンド整備などをしながら厳しい環境から作り上げてきたのだが、ここへきてある程度チーム力も整ってきたということも感じている。この夏は、一緒に積み上げてきた4人の3年生の思いも感じながらの戦いいうことになった。

 豊橋西の主将を務める谷町源君は、実は幼少時から足の痛みを感じてベルテス病という難病を克服してきている。中学でも野球部に所属していたが、足の状態が悪化して再度手術という苦難を乗り越えて今がある。高校野球はやらないつもりだったところ、野球経験者を探していた赴任間もない林監督が谷町君を見つけて声をかけた。やがて谷町君は、さまざまなハンデを乗り越えながらも、その野球に対する姿勢やひたむきさが評価されて主将となってチームを引っ張っている。

 「本当に一生懸命頑張ってやる子なんで、みんなそんな姿を見てきていますから、チームはまとまってきています」というように、林監督の評価も高い。

 そんな豊橋西の集大成の夏である。



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豊橋西ベンチは1年生は白の練習坊

 どちらも、この大会までには6月中旬以降の週末3回くらいしか練習試合が組めていないという状況で挑んだ。正直、チームとしては練り上げきれていないという現実は否めない。それでも、小坂井は竹生君、豊橋西は塚本君の両投手は、そんな練習不足を感じさせないくらいの内容だった。今の段階で持てる力を十分に出しあえたと言っていいのではないだろうか。

 先制したのは小坂井で一死から6番前川君が右前打すると、二死となってから8番高木君が右中間へ三塁打して帰した。そして、5回には一死一三塁から三走清水君と一走高尾君とで重盗を仕掛けてこれが見事に成功して2点目。さらに小坂井は1番菅原君、続く西途君の短長打に3番竹生君のタイムリー打でこの回3点。6回にも高木君、高尾君の連打などで加点した小坂井。7回にも失策絡みでさらに1点を追加。序盤の展開とは異なり、ややワンサイド気味になってきたかと思われた。

 ところが、その裏に豊橋西は二死から塚本君と中村真那斗君の連打で食い下がると、代打星川君の一打が相手失策を呼んで2者が帰った。さらに3番小川君も左前へタイムリー打して代走木和田君を帰した。まさに、豊橋西が執念と気迫でもぎ取った3点だった。

 しかし、豊橋西の反撃もここまで。結局、試合はそのまま小坂井のものとなった。お互い、失策やミスもあったけれども最後まできびきびとした好試合だった。

 小坂井近藤監督は、「笑顔がちょっとでも出せたということはよかったと思います。こういう時ですから、大人が子どもたちに寄り添ってあげるのは当たり前です。ただ、生徒たちにはここが着地点ではないとは言っていましたが、正直勝ててホッとしています。竹生は終わってみたらベストピッチと言っていいのではないでしょうか。去年の秋、結果が出せませんでしたけれど、頑張った成果だと思います」と、試合後は終始笑顔だった。

 また、師弟対決となった試合に関しては、「楽しかったですよ。教師冥利に尽きると言いますか、(林監督は)元気で、いいチームを作っていますよ。教え子たちが、こうやっていろんなところで頑張ってくれているのは嬉しいですね」と、ベテラン指導者としての思いも語っていた。

 恩師に敗れた林監督は、「力負けでしょうか。しっかり打たれて点を取られていますからね。だけど、7回に3点返せたことで、これは確実にこのチームのやってきたことが次へつながっていくと思います。今までだったら、0対6でそのままするズルズルといってしまうところですが、それを食い下がれたのは大きい。褒めてやりたい」と、少人数ながら頑張ってきた3年生をねぎらった。最後に小川君がタイムリーを打ったことも3年生の意地を見せられたということであった。また、9回には再び仕掛けてきた重盗を防げたことも、チームとして戦いながら隔週誌手行けていたことの証となった。

 そんなチームの成長を確認出来たことで、林監督はまた、秋からの新チームへの思いも育んでいた。

(文=手束 仁

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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