美里工vs興南
野球が出来る喜びをかみしめる
美里工・大城稜
沖縄県独自の夏の大会まで二週間を切ったこの日は、日本で唯一上陸戦がここ沖縄の地にて行われた日でもある。悲惨な戦争を二度としてはならない、忘れてはならないとする「慰霊の日」だ。
その23日に、コザしんきんスタジアムにて練習試合を行ったのが美里工と興南の強豪校。試合前は、両軍ナインと指導者が1分間の黙祷を捧げ、野球が出来る喜び、平和への感謝を改めて感じつつ試合にのぞんだ。
與古田、屋嘉比ともに好投
興南は1回、先頭打者の黄之芃がいきなりレフト前ヒットで出塁。2回には宮城が死球、3回にもこの回先頭打者の屋嘉比才輝が四球を選んぶなど、毎回走者を出し押し気味に試合を進めたが、美里工先発のサウスポー與古田美月が後続を締め得点を許さないナイスピッチング。
一方、さらに素晴らしい投球を見せたのが興南先発の右腕屋嘉比才輝だ。3月頭に訪れた野球部訪問の中で、「期待しているピッチャーの一人」と、我喜屋監督が教えてくれた屋嘉比才輝は、1回から4回まで一人の走者も出さないパーフェクトピッチングを披露。球速は130前後だが、変化球のキレとコントロールで相手打者を牛耳っていった。
両軍合わせて23安打の打撃戦
興南・屋嘉比
先制したのは興南。5回裏、この回先頭の比屋根秀斗が三塁打を放ちのろしを上げる。一死後、8番花城清太がライト線を襲う先制のタイムリー三塁打。さらに屋嘉比才輝がキッチリと犠牲フライを上げ2点を先制し前半を終えた。
追う美里工もさすがだ。6回表、興南二番手伊波を攻める。二死から2番屋良仁誠がセンター前にポトリと落とすヒットで出塁すると、次打者の打撃妨害で走者を溜め、頼りになる4番富島力斗がライトフェンスに当てる2点タイムリー二塁打で同点に追い付いた。7回、上間玲於がレフト前ヒットで出塁。ここで興南ベンチは三番手に山城京平をマウンドへ送る。まだ二年生ながら既に130km後半を叩き出す沖縄を代表する左腕だが美里工は臆さない。宮城竜馬が捕前への内野安打で続くと岡本恭輔がレフト線へのタイムリー2点二塁打。興南山城京平もここで二者連続三振を奪うなど片鱗を見せつけたが、3番高江洲正太郎がレフト前へタイムリーを放ち3点を勝ち越した。
興南もすかさずその裏、打撃好調の比屋根秀斗がレフト線へ二塁打。山城京平の打順に回ったところで、我喜屋監督は代打に1年生の森島を送る。その森島が期待に答えるレフト前へのタイムリー。さらに途中出場の赤嶺清之介もレフト前へのタイムリーで続き1点差とした。
見応えある後半の応酬。最後は9回に4点を奪った美里工が勝利したが、美里工が12安打、興南も11安打を放つなど、大会へ向けて打線にメドがついたのではないだろうか。
この日行われた抽選の結果、春の大会で沖縄尚学を苦しめた試合巧者の那覇商と興南が開幕ゲームを。美里工は新チーム後、共に凌ぎを削り合ってきた本部と11日の対戦が決まった。楽に勝てない相手だけに、美里工・興南両校の、最後の意地に期待したい。
(取材=當山 雅通)