試合レポート

岩倉vs専修大附

2020.06.21

野球ができる喜びを全身で感じながら、一球に一打に思いを込めて

岩倉vs専修大附 | 高校野球ドットコム
サヨナラ勝ちに喜ぶ岩倉の選手たち

【熱戦の模様をギャラリーでチェック!】

 シーズンインになったと思ったら、新型コロナウイルスの感染拡大防止で活動自粛要請となってしまった今年の高校野球。センバツも、夏の選手権も中止となってしまって、ここまで最後の夏を目指してきた3年生たちの思いはどうなってしまうのか…ということが問われ続けてきた。

 それでも思いを切らさず、自主練習だけは積んできた選手たち。そんな努力や思いが通じた。「夏の選手権の代替大会」という形ではあるが、いち早く対策を動いていた東京都はすぐに大会を実施することを発表。

 選手たちも、現場の指導者たちもそのことを喜んだ。そして、失いかけた目標を設定することができて、気持ちもことのほか前へ向けていけるようになったようだ。ただ、活動としてはまだまだ自粛モードで動きが思うようにならないというのも現実である。そして、19日に大きく移動などの規制が緩和されて東京都内でも私学各校が皮切りとなって対外試合を組んでいかれるようになった。

 この日の岩倉グラウンドには、専修大附が訪れていたが、いずれも今季初試合ということになった。専大附はこのところは[stadium]多摩一本杉球場[/stadium]を借りて、17時から20時頃まではナイターで練習はできていたという。しかし、せっかく紅白戦を予定していた18日が雨となりグラウンドが使えないという状態になってしまった。

 岩渕一隆監督は試合前には、「結局、ノックとバッティングしかしていないから、細かいプレーに関してはできていないところがある。ミスはしょうがないでしょうね。投手も、何人かでまかなうということになるでしょう。それしかやりようがない」と、ようやくこのところで野球の練習らしい形になってきてはいるが、不安だらけということを述べていた。

 岩倉も、もちろんそれ程状況は変わらない。寮生が戻ってきたのも今月になってからだった。そうした中での、お互いに今季待ちに待った初戦である。

 それでも、試合そのものは、スコアに表れているように接戦になった。
 1試合目は、中盤からは交互に点を取り合い6回、岩倉は2番島崎君と水村大海君の連打で2点を挙げて再びリード。専大附は7回にすぐに失策絡みで1点を返すが、8回に岩倉はボークで再び2点差とする。



岩倉vs専修大附 | 高校野球ドットコム
マウンドに集まった専修大附、ちょっと距離を取って

 波多江君が何とか2点をキープして逃げ切るかと思われたが、9回に専大附は四球の田中君を一塁に置いて2番安藤君が右翼ポールぎりぎりに柵越えの2ランを放ち土壇場で同点。試合としては、がぜん盛り上がった。ここで、岩倉は5人目として岩上君が登板して四球は出したが牽制で刺すなどして何とか抑えた。

 そしてその裏、一死から6番宮内君が四球で出ると、豊田浩之監督は代走に高畠君を起用。高畠君はすかさず二塁盗塁を決めると、続く富永君は思い切りよくスイングして右翼頭上を破るサヨナラ打となった。作戦もズバリ的中で、劇的といえば劇的なラストとなった。

 久しぶりの試合。その初戦をスコア的には何とかいい形で勝てた豊田監督は、「打ったり、投げたりということは、まあ、個々でやってもいたのでこんなもんでしょう。打線は、振れている選手から起用していきました。ただ、連係だとか、走塁の判断だとか、そういった細かい野球のスタイルは、実戦で失敗しながら覚えていかなくてはいけないのですが、その実践がなにもありませんでしたから、まさにこれからの短期間で何とか形を作っていくためには、やりながら覚えていくしかない」と分析していた。

 そんなこともあって、できるだけ機会を多く与えていこうということで、2試合とも多くの選手を起用していた。
 2試合目は、岩倉が序盤に二塁打を集中させて得点を重ねていった。2番弓指君は何と3本の二塁打で5打数3安打と好調ぶりを示していた。「投手には、不安がある」という岩渕監督の不安通り、専大附投手陣はなかなか抑え切れなかった。

 この日は朝方に少し雨も降って、せっかくの初戦が雨で流れてしまっては気の毒だと思っていたが、それ程降らなくてよかった。岩倉のグラウンドは入り口では、体温確認と消毒なども怠りなく準備して、感染拡大防止にも配慮していた。

 久々の試合ということで、試合段取りもややもたついたりもするところもあったりして、どちらも3時間近い試合になってしまったが、この日は暑さはそれほどでもなく熱中症の心配はさほどなかった。選手たちも、野球ができる喜びを全身で感じていたであろう。そして、何より無事に試合をこなせたことはまずはよかったと言っていいのではないだろうか。

(取材=手束 仁

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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