試合レポート

帝京vs日大三

2019.11.03

神宮第二球場の最後を飾るに相応しい名勝負!帝京・加田、好守で勝利を呼び込む

帝京vs日大三 | 高校野球ドットコム
帝京 先発・田代 涼太

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 試合開始前、両チームの選手と東京都高校野球連盟の役員がグラウンドに並び、堀内正東京都高校野球連盟会長と、武井克時同専務理事があいさつし、この試合が[stadium]神宮第二球場[/stadium]での最後の試合であることを告げた。それにしても、抽選による偶然ではあるけれども、最後の試合は、帝京・前田三夫監督、日大三・小倉全由監督と、東京を代表する強豪で、この球場で最も多く戦っているベテラン監督の対戦という、最後を飾るに最も相応しいカードになり、最後を飾るに相応しい名勝負になった。

 2-1というロースコアの試合になったが、中身の濃い展開になった。日大三の先発、左腕の児玉悠紀は、立ち上がりにやや難がある。1回表帝京は、3番。加田拓哉の中前安打と4番・新垣熙博の四球の走者が出たが、5番・小松涼馬は三振に倒れ無得点。

 その裏日大三は、二死一塁から4番・大城龍馬がセンターに大きな当たり。これを帝京の中堅手・加田拓哉が背走し、フェンスにぶつかりながら捕球した。好プレーであるが、この日の加田の活躍の中では、ほんの序の口であった。

 ここから、日大三・児玉、帝京田代涼太の息詰まる投手戦が始まる。両投手、投球もさることながら、守備も素晴らしく、走者を出しても、送りバントを素早く処理して進塁を許さず、なかなか得点のチャンスが生まれない。

 4回裏日大三は、4番・大城龍馬の二塁打と5番・西田琉之介の四球で無死一、二塁としたが、星憂芽のバントを田代は三塁に送球して刺し、進塁を許さない。さらに7番・山田和がセンターに低いライナーを放つが、これを中堅手・加田がダイブして好捕。飛び出していた二塁走者も刺され、併殺となった。

 5回表帝京は、1番・武者倫太郎が左前安打で出塁するが、2番・武藤闘夢のバントは、児玉が素早く処理して二塁で刺した。それでも続く2人は四死球で満塁となったが、児玉はキレのいいスライダーで5番・小松、6番・御代川健人を連続三振に仕留めた。帝京の前田三夫監督は、「児玉投手の配球は読めていたけど打てない」と語った。

 その裏日大三は、この回先頭の8番・齋藤広空が高めの球を強振して二塁打を放つが、9番・児玉は内角を攻められバントが決まらない。それでも2番・熊倉幹太がレフト線に二塁打を放って齋藤が生還。日大三が待望の先取点を挙げた。なおも走者を二塁に置いて、3番・柳舘憲吾はセンターに鋭い打球。これを中堅手の加田がまたもダイビングキャッチして、日大三のリードが広がるのを防いだ。


 「加田はキャプテンとして、声も出ていますし、いい動きをしていますよ」と、前田監督は語る。加田は「無意識に飛びました」と語る。その手は擦り傷を負い、親指には軽いやけどもあった。[stadium]神宮第二球場[/stadium]の堅い人工芝での必死のダイブであった。

 この好守が、6回表の帝京の反撃につながる。この回先頭の7番・阿出川瑠己が右前安打で出塁すると、8番・田巻脩三のバントを処理しようとした日大三の児玉は、人工芝に滑って尻もち。その後の処理もうまくいかず、二、三塁になる。ここで帝京は好投の田代に代打・尾瀬雄大を送る。尾瀬は二ゴロを打ち、阿出川は生還する。なおも続く一死三塁の場面で、1番・武者には初球スクイズ。これが決まり、帝京は逆転に成功した。ベテラン・前田監督の勝負に対する執念のみせた攻撃であった。

 帝京は田代に代打を送ったため、6回裏からは柳沼勇輝が登板。日大三も7回裏に児玉に代打を出したため、8回表からは三塁を守っていた柳舘が登板した。2人とも登板経験は豊富で、そう簡単に得点は許さない。

 それでも8回裏日大三は、この回先頭の2番・熊倉がライト線深くに長打を打つ。[stadium]神宮第二球場[/stadium]のライト線近くのフェンスは打球処理が難しい。フェンスに当たった打球はライト深くに転がり三塁打となる。無死三塁の場面に、帝京の前田監督も「1点は仕方ない」と思っていた。ところが柳沼は3番の柳舘を三振、4番・大城を二飛、5番・西田には四球を出したものの、6番・星を三振に仕留める圧巻の投球でリードを守る。

 曇り空でまだ午後3時くらいでも、だいぶ暗く感じるようになっていた9回表、二死後帝京の2番・武藤はレフトに大きな打球を飛ばす。[stadium]神宮第二球場[/stadium]、最後の本塁打かと思われたが、日大三の左翼手、途中出場の國森陸が、レフトフェンスの上にグラブを出してこれを捕球。帝京に追加点を許さない。ちなみに[stadium]神宮第二球場[/stadium]、最後の本塁打は、10月26日に日大二岩田侑真が記録している。

 それはともかく、國森の好守で日大三は勢いをつけて9回裏の攻撃に臨んだ。あっさり二死にはなったものの、好守備の國森の代打・伊藤翔が左中間に鋭い打球。これを帝京の中堅手・加田や左翼手の尾瀬が必死のダイブをしたが届かず三塁打になる。日大三は追い上げムードになったが、1番・渡辺凌矢が左飛に倒れ、濃厚な思いが凝縮された2時間15分の試合が終わった。

 試合後両チームの選手が記念撮影を行い、60年近い歴史のある球場での試合の終わりを惜しんだ。勝っても厳しいコメントが多い帝京の前田監督も、「いいゲームだったね」と感慨深げに語った。日大三の小倉全由監督が関東一の監督であった1980年代から、両監督は戦いを繰り広げてきた。「東京の監督は熱いですよ」と言いながら、前田監督は小倉監督にエールを送った。日大三は敗れたものの、高いレベルにあることを示した試合でもあった。

 来年の東京オリンピックの後、この球場は取り壊されることになっている。けれども[stadium]神宮第二球場[/stadium]の記憶とともに、最後の一戦となったこの試合も、語り継がれていくだろう。

 もっとも勝った帝京は、これからがセンバツ出場を目指した大詰めの戦いになる。「選手もまだまだと声を出し合っている。また1週間、いい練習をしてきます」と前田監督は語った。次は11月9日、舞台を[stadium]神宮球場[/stadium]に移して、創価との準決勝になる。

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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