浦和学院vs埼玉栄
4人中、3投手が140キロ超え!プロ注目右腕・内田も登場した超高校級投手の投げ合い
内田了介(埼玉栄)
9月27日、埼玉大会準々決勝4試合が開催。[stadium]市営大宮球場[/stadium]の第1試合は浦和学院vs埼玉栄の名門校対決が実現。試合は5対3で浦和学院が逆転勝利し、ベスト4進出を決めた。3年ぶりの関東大会出場まであと1勝となった。
お互い逸材揃いで、終盤まで手に汗握る好ゲームであった。
その中でも特に目を惹いたのが埼玉栄のエース・内田了介のピッチングだ。プロ注目右腕で夏の埼玉大会でも最速143キロをマークしていた内田はこの秋、さらに完成度が増している。
この試合は立ち上がりから142キロを計測するなど、力のあるピッチングを披露。夏と違うのはベース配分を意識するようになったこと。ストライク先行を意識して、制球力を意識し、130キロ後半のストレートでカウントを取り、あるいは110キロ前後のスラーブで、ストライクを重ねながら、ここぞという場面では最速143キロを計測したストレートでねじ伏せる。低めだけではなく、高めでも打ち取ることができており、近年の埼玉県の右投手では屈指の完成度を誇るのではないだろうか。埼玉栄には米倉貫太(honda)というプロ注目投手がいたが、米倉並みの好投手だといえよう。投手ならば誰もがうらやむ柔軟さ、しなやかさを持っていたが、内田の場合、力強さと完成度の高さで勝負する投手だろう。
6回まで無失点に抑えていた内田だったが、7回裏につかまってしまう。一死二、三塁から代打・松村に142キロのストレートをとらえられ、左越え適時二塁打を打たれ、同点に追いつかれ、1番・吉田匠吾(1年)にストレートを打たれ、逆転2ラン。さらに4番・吉田瑞の適時打も飛び出し、5失点。
完封ペースの内田を一気に攻略した浦和学院打線の粘り強さは恐るべし。内田にとっては1球の怖さを思い知った試合だろう。7回裏だけ攻め方が若干淡白になっていた。それでもストレート36球計測出来て、140キロ以上は27球、平均球速140.25キロと秋の時点でこの平均球速は素晴らしく、変化球の精度も高い。来年のドラフト候補として注目されるだろう。
美又王寿(浦和学院)
逆転勝利を呼び込んだのは、4回からマウンドに登った2番手の美又王寿の好リリーフが大きいだろう。体を沈み込ませて投げ込む美又は140キロ台のストレートを連発。常時135キロ~143キロを計測。平均球速138.28キロをマークした威力抜群のストレートは荒れ球が多く、狙い球が絞りにくい。120キロ前後のスライダーは横に曲がるもの、縦に落ちるものを投げ分ける。特に縦スライダーの落差は抜群で、高い確率で空振りを奪うことができる。カーブを織り交ぜながら、4回を投げ、無失点の好投を見せた。
3番手としてリリーフした1年生エース・三奈木海星も好リリーフ。8回裏、1点を失ったが、後続を抑え、勝利を呼び込んだメンタルの強さは見事。下半身主導のフォームから繰り出す直球は常時135キロ~140キロを計測し、切れの良いスライダー、フォークを低めに集める投球術は優秀。山口東リトルシニア時代から注目されてきた好投手だったが、1年生離れした完成度の高さを誇る投手だといえよう。
ちなみに浦和学院の先発・廣咲悠雅もなかなかの好左腕。コンパクトなテークバックから投げ込む130キロ~136キロは勢いがあった。決め球となる110キロ前半のスライダーはひざ元に決まると空振りを奪えるが、これを見送られると汲汲としたピッチングとなっていた。強豪校相手となれば、自分の思い通りにいかない。そこで、スライダー以外で武器となる変化球があると、引き出しが多くなり、今よりも勝負ができるはずだ。
一方、野手では浦和学院の7番で主将の金丸斗南は内田から2安打を放った打撃技術の高さが光った。内田から本塁打を放った1番・吉田も無駄のないスイング軌道から長打を量産する左の巧打者。また、2番・里飛鳥もOBの笹川晃平を思い出させるような構えとポテンシャルの高さを持った大型外野手だ。
敗れた埼玉栄は2本の適時打を放った江城優明は県内屈指の大型外野手で、対応力の高さが光るが、打ちにいくときに捏ねるようなスイングになっており、恵まれた体格を生かすことができていない。もう少しボールを手元まで呼び込んで腰をしっかりと旋回させたスイングができると、本塁打量産も期待できるだろう。1番の加藤真浩も思い切りの良いスイングから鋭い打球を放った大型センターで、春以降の進化が楽しみな選手だった。
(記事:河嶋 宗一)