西武台vs浦和実

豆田泰志（浦和実業）

　第二試合は、回転数が多く浮き上がるような直球が武器の本格派右腕・豆田擁する浦和実業と西武台の一戦である。豆田と言うと今夏4回戦で浦和学院を完封したことは記憶に新しいが、次の市立川越戦、2番手で登板し、ビハインドながらも前の試合の疲労が抜けず途中降板しチームも敗戦した。それ以降、豆田は新人戦や地区予選も含めて、地区の代表決定戦・細田学園戦で17点リードした5回に、試運転のような形での1イニングしか登板していない。あまりに投げないので一部で故障説が流れるなど、その状態に注目が集まった。

　浦和実業は新人戦で豆田を温存しながらも、打線が内田、田村擁する埼玉栄投手陣を打ち砕き大勝するなど、新チームの出だしは順調であった。一方の西武台も同じく打線は活発であり、新人戦では経験豊富なエース左腕・増田優真（2年）が浦和学院打線を終盤まで2失点に抑える（最終的には0対5）など、まずまずの仕上がりである。

　まずスタメンだが、西武台はこの日、1番に武井大智（1年）、7番に李應太（2年）を入れるなど地区予選の大宮南戦と比べ打順はもちろん、メンバーもだいぶ変わっている。一方の浦和実業は新人戦からの変更点はメンバーこそ変わっていないが、打順が3番・倉持、6番・吉田浩隆（2年）、7番・板垣孝太（2年）と変わっている。

　そして先発は西武台がエースの左腕・増田、一方の浦和実業はエース豆田ではなく、新人戦同様に背番号20の金子聖也（2年）が登板し試合が始まる。金子も豆田ほどではないが、高めに伸びる直球が武器の投手であり、埼玉栄打線からも高めで三振を奪っていた。この試合も金子がある程度ゲームを作ると思っていた。だが、この日はその金子が誤算であった。

　試合は初回から動く。

　西武台は浦和実業・金子の立ち上がりを攻め立て、先頭の武井がセンター前ヒットを放ち出塁すると、続く小松大空（2年）の所で西武台ベンチはエンドランを仕掛ける。これが見事に決まりレフト前ヒットで無死一、二塁とチャンスを広げると、ここで3番・深田翔太（1年）がレフトフェンス直撃の2点タイムリー二塁打を放ち先制する。さらに続く松木光（2年）がライト前ヒットを放ち無死一、三塁とチャンスを広げると、5番・山田隼（2年）もセンター前タイムリーを放つなど、まだ無死ながらあっという間に3点を先制する。

　その後の無死一、二塁のチャンスでも西武台ベンチは強攻をさせるが、後続が倒れ3点でこの回の攻撃を終えるが、この回のバントはゼロ、先頭から一気に5連打を浴びせるなどの猛攻を見せ、早くも浦和実業・金子をこの回でマウンドから引きずり降ろすことに成功する。

　一方の浦和実業もその裏、西武台・増田の立ち上がりを攻め、一死から2番・松村裕大（2年）がセンター前ヒットを放ち出塁すると、すぐさま二盗を決め一死二塁とする。続く倉持も四球を選び一死一、二塁とチャンスを広げるが、後続が倒れ無得点で終える。

　そして、2回表誰がマウンドに上がるか注目されたが、これ以上失点を許すわけにはいかない浦和実業ベンチは早くもマウンドにエース豆田を送る。だが、頼みの豆田もピリッとしない。

　2回表、西武台は浦和実業・豆田の立ち上がりを攻め、この回先頭の武井がレフト前ヒットを放ち出塁すると、一死後3番・深田が右中間へ二塁打を放ち一死二、三塁とチャンスを広げる。二死後、5番・山田の所でワイルドピッチが生まれるが、投球がダイレクトでキャッチャーの元へ跳ね返って来たため、三走・武井は刺され無得点で終わる。

　するとその裏、またしても浦和実業が反撃のチャンスを迎える。

　この回先頭の吉田がライト前ヒットを放ち出塁すると、続く板垣の所で今度は浦和実業ベンチがエンドランを仕掛けるとこれが見事に決まる。板垣は期待に応えレフト前ヒットを放ち無死一、三塁と絶好の得点機を迎える。だが、打順は下位、まず1点か、それとも一気に大量点か、ベンチは難しい選択を迫られる。ベンチの選択は強攻策であったが、結局後続が2三振を喫するなど三書凡退に倒れ、浦和実業は無得点でこの回の攻撃を終わる。ここで最低1点でも返しておけば、浦和実業が裏攻めということもあり、マウンドにはエース豆田が上がっている。その後の展開も変わっていたであろう。

　これで立ち直った西武台・増田は持ち味である制球力で3回以降浦和実業打線の鎮静化に成功する。特に、4回以降は目に見えて右打者のインコースへの直球が増え始め、それを武器に浦和実業打線を無失点に抑える。

増田優真（西武台）

　一方、浦和実業・豆田は3回以降も苦しいマウンドが続く。直球の威力は悪くないのだが、高めに浮きやや制球に苦しむ。そしてカウントを取りに行った変化球は狙われる。

　西武台は3回表、一死から6番・伊澤走（2年）がセカンドへの内野安打で出塁すると、続く李もセンター前ヒットを放ち一死一、二塁とするが後続が倒れ無得点に終わる。西武台は4回表も、一死から2番・小松が四球を選び出塁すると、二死後、4番・松木の打球はファーストゴロエラーとなり二死一、三塁とするが、後続が倒れ無得点に終わる。

　迎えた7回表、西武台はこの回先頭の深田がレフト前ヒットを放ち出塁すると、続く松木がきっちりと送り一死二塁とする。ここで5番・山田の打球はライト前への小飛球となる。だが、セカンドが深追いしてしまったことでライトも取れずヒットとなり一死一、三塁とチャンスが広がる。続く伊澤の所で豆田がワイルドピッチを放り貴重な追加点が西武台に入る。

　これで楽になった西武台は9回表、この回先頭の山田がライトスタンドへソロ本塁打を放ち5対0とし試合を決めた。

　投げては西武台・増田が5回以降は毎回のように走者を背負いながらも後続を抑え、完封勝利を飾った西武台が、浦和実業を下し二回戦へ駒を進めた。

　まず、西武台だが、この日はとにかく初回の集中打がすべてであろう。初回に金子を打ち崩したことで、相手のプランを乱すことに成功した。初回の3点で常に優位な状態で試合を進められたのは大きい。打線はこの日も13安打を放つなど好調を維持しており切れ目がない。さらに豆田を打ったことで打線には自信を持ったであろう。エースの増田も安定してゲームを作ることができるだけに、今後台風の目になる可能性を秘めている。

　一方の浦和実業だが、豆田はこの日のMAXは138kmと、久しぶりに長いイニングを投げたことを考えればまずまずの出来であろう。とにかく、先発の金子が誤算であった。本来の直球の伸びは見られず、リズムに乗る前に終わってしまった。

　これは私見だが、上位進出を考えると豆田はおそらく、旧チームの三田のように後ろを任されるのではと予想していた。そして旧チームの豆田が投げていたポジションを今大会は金子が担うのではと思っていた。打線は新チーム結成当初から好調を維持していたが、この日は初回の3点のビハインドでやや焦りが生まれたか。結果的には2回裏の無得点が最後まで響いた。1点ずつ返していけば十分逆転できる点差であったが、終始チグハグであった。今大会で上位進出を狙えただけにここでの敗戦は痛恨であろう。

　とはいえ、大会屈指の投手がいることには違いない。再度固守共に整備し直しこの悔しさを春以降にぶつけて欲しい。

（記事：南 英博）