試合レポート

尾道vs広島国泰寺

2019.07.27

尾道が接戦を制し、ベスト4進出!

 大正、昭和、平成、令和と歩んできた高校野球史にも記念すべき初試合というものがある。大正四年に行われた記念すべき第一回大会の開幕試合は、鳥取一中対広島一中の試合だった。その試合は鳥取一中が勝利。その後昭和になり平成になり、鳥取一中は鳥取西と名前を変え、これまでに二十回以上甲子園に出場する文武両道の名門校となっている。さて、その負けた方、広島一中はどうか?

 答えは、それ以降甲子園の出場はないという事実である。名前も国泰寺に代わり、勉学面では県下有数の進学校として名をはせる一方で、野球部の成績は振るわない。ベスト8までに顔を出すことは珍しくないが、甲子園とは無縁の経歴が長く続いている。高校野球も今年で101回。百大会ぶりの甲子園出場を目指す国泰寺が準々決勝で尾道と対戦した。国泰寺に比べれば歴史は浅いがベスト4や決勝にも顔を見せる強豪校だ。先手を取ったのは尾道、二回裏二死走者なしから、七番河月琉貴(2年)が四球で出ると、直後にパスボールで二死二塁のチャンスを作る。すると八番山口明(3年)がライト前に運び、河月が生還。尾道が先制する。

 すぐさま追いつきたい国泰寺だが、尾道先発の本格派、井上愛斗(3年)の前に打線が音無し。コンスタントに140キロを計測する剛速球の前に国泰寺打線は手も足も出ない。それでも粘りに粘り、打開策を見つけようと努力する。国泰寺の先発上田健生(3年)も我慢の投球、尾道打線にそれ以降の追加点を許さず、スコアボードに0が並ぶ。

 そのまま試合が終わるのかと思われた八回、国泰寺打線がようやく牙をむいた。本格派の剛球右腕井上も、ここまで百二十球以上の球数を重ね、疲労が出てきていたのだろう。八回先頭の田部友悠(3年)がエラーで出塁すると二番の山根壮一朗(3年)もレフト前ヒットで続く。これがエンドランとなり、無死一、三塁。この試合最大のチャンス。打席には今日三打数一安打の三番河村迅(3年)。[stadium]みよし運動公園野球場[/stadium]の人工芝グラウンドにたたきつけた打球はショートがさばき、そのまま二塁を踏んで一塁へ転送、ダブルプレーの間に田部が生還し、同点に追いつく。ぴりりとした緊張感のある展開が最後まで続いたが、終わりはあっさりと訪れた。九回、国泰寺はここまで一失点と好投していた上田をライトに送り、変則左腕の冨田音桜(3年)をマウンドに上げる。緊張していたのかマウンドの冨田は精彩を欠いた。先頭の六番濱岡修平(3年)を歩かせると、直後に二盗を許し、七番河月にもヒットを許す苦しい展開。緩いボールで打たせて取る富田の投球を見破ったのか、河月も二盗を成功させ、これで無死二、三塁。なんとか一死をとりたい富田だが、八番山口も歩かせてしまい、絶体絶命の無死満塁となる。内野も外野も前進守備を敷き、本塁でのダブルプレーやバックホーム態勢で、冨田を鼓舞する。

 打席には今日三打数無安打の植田司(3年)。初球ファールのあとの二球目。富田の投じた17球目を強打すると、鋭いライナーとなってレフト前に転がった。レフトの河村が懸命のバックホームをするも、間に合わず、尾道がサヨナラ勝ちで準決勝に駒をすすめた。

 準決勝では広島新庄を大差で下した尾道商業と決勝への切符を争う。

(文:編集部

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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