試合レポート

神村学園vs大島

2019.07.23

野球の神様、振り向いたが…・大島

 第1シード神村学園を相手に、ノーシードからここまで接戦を勝ち抜いてきた大島が序盤から押し気味に試合を進めていた。

 5回表、一死から2つの四球とエラーで満塁。神村学園はここで先発・桑原秀侍(2年)からエース田中瞬太朗(2年)にスイッチ。大島の4番・今里武之介(3年)は初球を弾き返し、走者一掃のライトオーバー三塁打で3点を先取した。

 エース赤崎太優主将(3年)は8回まで神村学園打線を散発3安打、三塁を踏ませない好投。金星は目前だったが、神村学園が土壇場9回裏で息を吹き返す。
 2番・田本涼(3年)、3番・古川朋樹(2年)が連打で出塁、死球で無死満塁となる。5番・田中大陸(2年)が追い込まれながらも粘ってレフト前に2点タイムリー。6番・松尾駿助(3年)がセンター前に弾き返し、劇的な逆転サヨナラ勝ちだった。

 3点リードで迎えた9回裏、それまで無心で投げ続けたエース赤崎主将の心境に微妙な変化が訪れる。
 「応援に応えるためにも勝たなければと意識して、腕が思い切り振れなくなった」

 瞬く間に集中打を浴び1点差に詰め寄られる。最後に打たれたボールはスライダー。決して悪いボールではなかったが、腕が振れていなかった分、相手に執念で弾き返された。
 序盤から押し気味に試合を進め、4番・今里のタイムリー三塁打で3点先取…第1シード相手に優位に試合が進められたのは「赤崎―今里のバッテリーが安定していた」(塗木哲哉監督)からだ。2人で相手打者の傾向と対策を徹底して練り、直球を見せ球にして変化球で勝負する配球を基本線に、思い通りの投球が8回までできた。

 今里が二盗を阻止し、併殺を2度とるなど守備も無失策の堅守で盛り上げた。「バックを信じて無心で腕を振るだけだった」と赤崎主将は8回までの投球を振り返った。
 「野球の神様を振り向かせることはできたと思う」と塗木監督。春の大会では初戦で鹿児島商に逆転サヨナラ負けしてから「神様に振り向いてもらう」ために何をすればいいか、常に自分たちに課してきた。「あいさつや授業を受ける態度、野球以外の学校生活を見直した」と今里。長期遠征となった今大会、朝食の前に自主的に球場周辺のごみ拾いをした選手もいた。

 今大会、苦しみながらも接戦を勝ち抜き、2年ぶりに8強入り。初の4強入りもあと一歩と迫ることができた。奇しくも春の鹿商戦と同じく3点差をひっくり返されての逆転サヨナラ負けだが「意味は全く違う」(塗木監督)。春は自分たちでリズムを崩し、敗れ去った。今回は追い詰められたことで、本気で勝ちたい、負けられない気持ちの強さを土壇場でみせ、4点取り返した神村の底力に屈した。

 「今度はうちがこういう場で4点取り返せるチームになろう!」
 1、2年生に塗木監督が檄を飛ばす。赤崎主将は「自分たちは力がないチームだったけど、後輩たちは力のある選手が多い。次は必ず甲子園に出てもらいたい」と叶えられなかった夢を託していた。

(文=政 純一郎

2019年 第101回全国高等学校野球選手権大会鹿児島大会
■開催期間:2019年7月6~7月23日(予定)
■組み合わせ表【2019年 第101回全国高等学校野球選手権大会鹿児島大会】
■展望コラム【出場70チーム、組み合わせ決まる!神村学園、鹿児島城西などを軸に優勝争い?】
■各ブロックの見どころ【本命・神村学園、対抗馬・鹿児島城西? 台風の目はどこか?】

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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