試合レポート

習志野vs市立和歌山

2019.03.31

一戦一戦成長し続ける習志野とエース飯塚。最後は逆転勝利!

 美爆音と巧みな駆け引きで相手を苦しめ、接戦を制してきた習志野と迫力ある打撃と1球に対する執念強さで勝ち上がった市立和歌山との対決。

 習志野は選手の様子を見ると活気があり、1番竹縄 俊希がレフトへ二塁打を放ち、一死三塁から3番角田 勇斗の中前適時打で1点を先制する。

 習志野は先発・岩沢 知幸が登板するが、市立和歌山打線に捉えられ、4番柏山 崇がライトへ適時二塁打を放ち、逆転に成功。さらに5番米田航輝の適時打で3点目を入れた。その直後、大きなプレーがあった。一塁走者・米田がリードを大きくとっているのを捕手・兼子 将太朗が一塁へ送球。一塁走者は挟まれ、アウトとなる。勢いに乗っていた市立和歌山の流れを寸断させるワンプレーだった。兼子は「普段から走者を見ていてといわれていて、大きなプレーだった」と振り返る。

 その後は拮抗とした試合展開。市立和歌山の戦いぶりは実に慎重だった。選手たちは習志野の美爆音に備えて、球場での練習ではジェスチャーでのやり取り。フライが上がると、選手たちは大きなジェスチャーでやり取りをしてアウトにする。習志野に対して、しっかりと準備してきたのが分かる。これまで習志野と対戦してきたチームとくらべても最も落ち着いた試合運びをしているチームだと思う。

 どちらかとミスが多いのは、習志野で1回表の併殺、その後の盗塁失敗、挟殺からのダブルプレー。ただ習志野がしたたかなのはミスがあっても着実に走者を進め、何度もチャンスを作ったりできることだ。

 それができるのは選手たちのポジティブ思考が大きい。主将の竹縄が語る。
 「うちの場合、ミスがあったから慎重になるのではなく、たとえば走塁ミスがあっても積極的にやることで学べるものがあるから、積極的にプレーしなさいと小林先生から教えられていますが、それを実践できているのが大きいきいと思います」

 渦中のサイン盗み疑惑があり、さらにセンターの根本翔吾が負傷。高校生ならば動揺していてもおかしくない騒動。それでも竹縄によると、「自分たちのチームにいうのもなんですが、選手たちは大人で、動揺する様子はなく、この試合に向かってしっかりと集中ができていました」とチームメイトの冷静ぶりに目を細める。

 この精神力の強さがミスがあってもカバーできる強さがあり、突出した選手はいなくても、センバツ準々決勝まで勝ち上がれたのだ。

 じわじわとチャンスを作った習志野は5回表、3番角田の適時打で1点差に迫ると、6回表にはエース・飯塚 脩人が自ら適時打を放って、ついに同点。7回表には併殺崩れからの1点で勝ち越しに成功する。

 素晴らしかったのは飯塚の投球だ。前回の星稜戦と比べても、終盤になっても勢いが落ちない。さらに速球、変化球のコマンド力も高い。飯塚は速球を2段階で分けており、まずコントロール重視の135キロ前後の直球でカウントを取り、ここぞという場面ではギアを上げて、140キロ中盤の速球を投げ込む。ギアの入れ替えは新チームから意識して取り組んだことであり、センバツで完成形を迎えた。この試合の最速は146キロ。受ける兼子も
 「ギアを入れたときのストレートは素晴らしいものがあった」と絶賛する。

 ストレートは両サイドにコントロールできており、さらに125キロ前後のスライダーは右打者には外、左打者にはひざ元にきっちりとコントロールができる。強打の市立和歌山打線でも攻略のしようがない。

 1年前デビューした時、140キロ前半で押していくばかりで、まだそこには投球術が感じられなかった。新チームからストレート以外の変化球を磨きかけ、スライダーの切れ味、コントロールも「素晴らしかった」と兼子は絶賛する。スライダーが武器になったことで、今ではコーナーワーク、高め、低めと打者に応じた配球と、高精度な投球術を見せる投手へ成長した。1学年上の先輩・古谷拓郎(現・千葉ロッテ)のような洗練さはない。だが武骨さがありながら実戦力を磨いてきた飯塚の成長ぶりは素晴らしかった。8回裏、打球に足が直撃するアクシデントがありながらも、球威は衰える気配は見られなかった。最後の打者を空振り三振に打ち取り、初のベスト4進出を決めた。

 習志野の小林監督は飯塚の成長に驚きを見せている。
 「飯塚がセンバツで成長してくれました。まずマウンド上で味方に声をかけるようになったこと。昨秋は投げることに精いっぱいだった彼が2年生の野手陣に声をかけたところ。ピッチング面では無理に力勝負いかなくなったところが素晴らしいですね」
 一戦一戦成長し続ける習志野とエースの飯塚。彼らのメンタリティは強い組織、そして勝てる組織になるためのヒントが満ちている。

(文=河嶋 宗一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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