札幌大谷vs星稜
札幌大谷、投手戦を制し、初出場で優勝!北本、泥臭く逆転の決勝打
札幌 大谷先発・西原 健太
この大会、星稜のエース・奥川恭伸は、抜きん出た存在である。といっても、2試合投げて来ているだけあり、林和成監督は、「軽い張りもあるので、あまり無理はさせたくない。マックス3回と言っています」と語る。そこで先発のマウンドには、1年生の右腕・荻原吟哉が上がった。
一方札幌大谷は準決勝で、背番号17の太田流星が、あわやノーヒットノーランかという好投。船尾隆広監督は、エースの西原健太に「決勝はお前だ」と、試合前日に言い渡し、満を持しての登板である。
初戦の龍谷大平安戦以来の登板となった西原は、1回から3回まで1人の走者も出さず、奪三振5と、完璧な立ち上がり。4回表に死球の走者は出したものの、準決勝の太田に続き無安打投球である。「うちのバッターを研究しているように思いました。左バッターへのチェンジアップには苦労しました」と、星稜の林監督は語る。
札幌大谷はこの大会、ここまでの3試合で全て初回に得点している。この試合の1回裏も、1番・北本壮一朗、2番・釜萢大司と続けて四球で出塁し、チャンスをつかんだが、続く3人が凡退し、得点を挙げることができない。ここから星稜の先発・荻原の好投が始まる、3回裏に9番・中川征典が内野安打で出塁したものの、札幌大谷は、なかなか安打すら出ない。
落ち着いてスクイズを決めた荻原
0対0の均衡が破れたのは、5回表だった。この試合は5番、右翼手で出場している奥川は、二遊間の当たり。札幌大谷の二塁手・釜萢が捕球して、一塁への送球がやや悪送球になり、安打か失策か微妙なところではあったが、記録は失策。まだ西原の無安打投球は続く。けれども、6番・福本陽生はこの試合チーム初安打となる左前安打を放ち無死一、三塁となる。続く6番・山本伊織の投ゴロを、札幌大谷の西原は捕球し損ない、三塁走者の奥川は慌てて本塁に突っ込んだが、三本間に挟まれアウト。一死二、三塁となったが、この試合好投している8番・荻原が落ち着いてスクイズを決めて、星稜が1点を先制した。
リードされた札幌大谷であるが、決勝戦の雰囲気を楽しんでいるところがあり、慌てない。そして、泥臭く点を取りに行くというスタイルを貫く。
逆転打を放った北本
試合開始から1時間8分。早くも7回裏、札幌大谷の攻撃を迎えた。この回先頭の6番・佐藤颯馬の遊直を、星稜の遊撃手・内山壮真が好捕。7番・清水悠我が中前安打で出塁すると、8番・佐野翔騎郎は内角を引っ張りライトへの二塁打を放ち、一死二、三塁とする。9番・中川征の右飛はやや浅く、三塁走者は生還できない。二死となったが、1番・北本が食らいつくようにして打った打球は二遊間を破る中前安打になり、2人の走者が生還し、札幌大谷は逆転した。「打った瞬間はショートゴロと思いましたが、いいところに飛んでくれました」と北本が語る、執念の一打が決勝打になった。
続く釜萢も中前安打を放ち二死一、三塁となったところで、星稜は好投の荻原に代えて、エースの奥川をマウンドに上げた。奥川は3番の飯田柊哉を145キロ速球で三振に仕留め、ピンチを切り抜ける。
札幌大谷の西原の好投は続き、星稜はチャンスを広げられない。9回表は、4番・内山が四球で出塁したが、5番・奥川は二ゴロの併殺に終わり、試合終了。2対1で札幌大谷が勝ち。初出場で優勝を飾った。北海道勢の優勝は駒大苫小牧以来、13年ぶりになる。
試合後、札幌大谷の船尾監督は、優勝が信じられないといった感じで、「何が起きたのか分からないような状況です」と語った。それでも、準決勝の太田に続き、この試合は西原が好投。捕手の飯田が、投手の良さを引き出した。西原にしても太田にしても飯田にしても、このチームの主力の多くは、札幌大谷シニアのメンバーで、中学生の時から、同じチームで硬式野球をしている。中高一貫のまとまりの良さが、チーム力の向上につながった。中高一貫自体は今の時代珍しいことではないが、何か新たな時代の到来を感じさせる、札幌大谷の優勝である。
札幌大谷ナイン
星稜は奥川が最後の打者になった。この大会の主役は奥川であり、後年この大会は、奥川のいた大会と記憶されるのではないか。そうした存在になるよう、今後のさらなる成長に期待したい。
夏の第100回大会で盛り上がった今年の高校野球の公式戦は、これで全て終わった。決勝戦も、最後を飾るにふさわしい、好ゲームだった。札幌大谷にも星稜にもこれから厳しい冬がやってくる。冬を超えて、たくましくなった姿を、来年の春にみせてほしい。
(文=大島 裕史)