東浦vs誉
今の段階で、持てる力をぶつけ合った好試合、東浦が延長10回サヨナラ勝ち
東浦ナイン
この春の県大会では優勝を果たして、春季東海地区大会にも進出して、チームとしての格を一つ上げた誉。この大会でも、自信の4強進出と言っていい。選手の体格、パワーを含めて、尾張地区では確実に強い存在となってきている。
一方、前日の誠信との試合で、0対8からの大逆転で勝ち上がってきた東浦。チームの士気としては、上がってきている。シーズン最後の公式大会でもあり、そういう場面で劇的な勝ち方が出来たことは、チームそのものも成長していく力と自信になるはずである。
そんな勢いを示すかのように初回、東浦は敵失に捕逸と死球で好機を得ると、4番青柳君が左前へタイムリー打を放って先制。3回に澤野君の右越ソロで同点とされても、その裏すぐに戸嶋君の三塁打と青柳君の中犠飛で再びリードするという逞しさを見せた。
しかし、さすがに誉も力強い。5回に松田君が左翼へソロアーチを放って再び同点とする。こうして、お互いが1点ずつを2度取り合った試合となった。誉の矢幡真也監督は、4回途中から、先発の左腕杉本君から力強さのある右腕山口君を投入。山口君は一死一三塁という厳しい場面でのリリーフだったが、起用に応えてしっかりと抑え込んだ。そして、以降0に抑えていく。
東浦は先発の永井君が5回まで投げると、本塁打2本のみの2失点だったが、中嶋勇喜監督はスパッと森田君に切り換えた。「前日、誉さんの打線を見ていて、ストレート系には強いなとは思っていました。だから目先を変えていかないとと思って、ストレート系で釣っておいて、途中でタテの変化のいい森田を投入しました。それを、上手に引き出せました」と、いずれもストレートを本塁打されながらも、いずれもソロでもあり、リードされなかったということもあって、それはある程度は想定内だったようだ。そして、森田君がタテ系の変化球を中心に上手にかわしていっていたのだが、それを引き出した成田捕手のリードも評価していた。
こうして、後半は山口君と森田君の投げ合いという感じでお互いに突破口がつかめないまま、延長に突入した。東浦は5~8回は安打も奪えなかった。それでも、守りでは戸嶋君と深谷君の二遊間なども好守備を見せて、森田君を支えていた。ことに延長に入った10回の守りでは、相次いで中前へ抜けていくかというようなあたりを処理して盛り上げた。
そして、その勢いで裏の攻撃、2番戸嶋君が粘って四球を選ぶと続く深谷君はきっちりと送る。まさに、守りから攻撃へつないでいくということで言えば、好守備を見せた選手が打席でもそれぞれの役を果たしていくといういい形でチャンスメイクした。ここで、最も頼れる男とでもいうべき4番青柳君。期待に応えて三塁線を破って、二塁走者がホームインサヨナラとなった。青柳君は初回のタイムリー、3回の犠飛と合わせて、全打点を挙げて、まさに頼れる4番打者ぶりだった。
東浦は、実は、この時期2年生は修学旅行だという。しかし、選手たちはそれをキャンセルしてこの大会に臨んでいた。それだけに価値ある勝利となった。「修学旅行は、積み立てもして、お金もかかっているのですが、それをキャンセルしてまで挑んだ大会です。そこで、こうしてお金では買えない、貴重な経験を積んでくれて、それはかけがえのないもの」と、中嶋監督は選手たちが頑張って、確実に修学旅行以上の成果を挙げてきていることを喜んだ。
9月の県大会では中部大一に完封勝ちしたものの、中京大中京には力負け。そして、1カ月後のこの大会では誠信と、誉という尾張地区の強豪私学に競り勝ち。チームとしては、確実に成長している。と言うより、1カ月で選手たちはこんなにも成長していかれるものなのだということも、試合を通じて身をもって示してくれていると言っていいであろう。
「正直、どこまで行けるかなというところもありました。個々の力としては、まだ、以前にベスト8に行けた時の方があったかもしれません。でも、選手たちはこうした試合をしていくことでモチベーションもさらに上がっていきますし、この大会を獲ろうということもそうですけれども、冬のトレーニングに向けても意識は上がっていかれると思います」
地域密着していきながら、野球部が頑張ることで街も活性化していこうという意識でも取り組んでいる東浦。それが、確実に一つの形として表れてきている。「まだまだチームは、成長していきます」と、中嶋監督は、もっと先を見据えていた。
(文=手束 仁)