津田学園vs御殿場西
前投手が好投して、津田学園が御殿場西を振り切ってベスト4進出
最速143キロをマークした津田学園の前君
静岡県大会を久しぶりに制した御殿場西。常葉菊川時代に選抜優勝などの実績を作った森下知幸監督が就任して、その攻撃的野球“フルスイングベースボール”がようやく定着してきての成果だったとも言えようか。その御殿場西に対して、前日の初戦で大垣日大に中盤の集中打でコールド勝ちを果たして進撃してきた津田学園が挑む形となった。
初回の御殿場西は、先頭の夏賀君が右線二塁打で出塁するものの、二者が津田学園の前君にストレートを捉えきれず凡退。4番に入っている内海君も高く打ち上げた内野飛球となってしまったが、これを譲り合った津田学園内野陣が見合ってしまい、ポトリとフィールドに落ちて、御殿場西が幸運な先制点を挙げた。
しかし、その後は前君のストレートは140キロ前後を常時マークし、変化球の制球もよく、御殿場西の打線を封じていた。そして前日は全員安打だった津田学園打線は、3回までは1安打しか放てなかったが、4回に3番石川君、4番前川君の左前打などで一死満塁として、6番阿萬田君の左犠飛で同点とした。
そしてグラウンド整備後の6回、津田学園は佐川竜朗監督が「合宿所では寮長を務めているし、チームのキーマン的存在」として評価している2番松尾君が三遊間を破って出塁すると、しっかりバントで送り、前川君が左前打して一三塁。続く藤井君がしぶとく一二塁間を破って、ついに津田学園がリードした。さらに阿萬田君は左中間へ三塁打し、前日は4安打して当たりまくっていた小林世直君も右前打してこの回3点。津田学園が主導権を握った。
津田学園は8回、「追加点が欲しい」という場面で、前川君がまだ、腰痛もあって100%の体調ではないという中で、2試合連続となる左翼へのソロアーチを放つ。打球は場外へ飛んでいく素晴らしいものだった。なおも藤井君も続いて、ついに御殿場西の先発高田君をマウンドから降ろす。リリーフした杉本君に対しても小林君と9番渡邉保育君と相次いで二塁打してこの回も都合3点。御殿場西の攻撃を前君が、9回に新井七輝君のソロホーマーを浴びたものの、9回で被安打4本、2失点に抑えて快勝した。前君は、中盤の5~8回は一人の走者を出すこともなく3者凡退に抑えており、その間に味方がリードしていったことで、さらにいいペースで投げられたようだ。
それでも、佐川監督は、「(前投手は)必ずしもベストではない状態で、あれだけ投げられたのはよかった。変化球のキレももっとよくワンランク上の投球が出来るはず」と、さらなる高みを期待していた。そして、試合展開に関しては、「5回の整備の時に、選手たちとじっくり話して、試合の流れを変えていこうと言ったけれども、松尾が期待に応えてくれて、突破口になった」と、6回の攻撃の形が成功したことを勝因に挙げていた。
御殿場西の敗退によって、静岡勢は今大会では1勝も挙げられず、すべて姿を消したことになったが、「もっと思い切ってバットを振って欲しかった」と、森下監督は残念がった。
(文・写真=手束 仁)