木更津総合vs興南
興南打線を完封に抑えた木更津総合が3回戦へ
木更津総合の先発、野尻幸輝(3年)をこれまでピッチャーとして考えたことがなかった。「4番・三塁手」というのが私の中の野尻像で、甲子園に来てそのピッチングを見てもピッチャーとして評価していいのか実は迷っている。西千葉代表校の中央学院、大谷拓海(3年)にも言えることで、大谷翔平(エンゼルス)の出現以来、ちょっとでも投打で目立つと〝二刀流″の活字が躍るのはどうかと思う。
この日対戦した興南各打者も野尻と対戦してどういう評価をしていいのか迷ったと思う。1回裏、1死後に2、3番打者に四死球を与える姿を見て、興南各打者は「コントロールは甘い」という印象を持っただろう。投球フォームは現在の松坂大輔(中日)のように体を横に振って反動を使おうとする。こういう投げ方をするピッチャーはだいたいコントロールが不安定なはずである。しかし、野尻は意外と崩れなかった。
野尻の粘り強さはファールの数にも表れている。興南打線が記録したファールは、野尻がマウンドにいた7.1回の間に26個あり、木更津総合が9イニングで記録した16個とくらべる明らかに多い。興南が粘ったというより野尻が緩急と左右・高低の投げ分けで興南打線を翻弄し、ファールを急増させたと言ったほうがいいだろう。
打線では木更津総合各打者のフォームのよさに注目した。すり足、一本足に関わらず、ゆったりとした動きで始動をスタートし、探るような動きでステップに移行する選手が多かった。名前を挙げると、東智弥、神子瑞己、山中稜真、神山竜之介、田中斗暉也、大曽根哲平、小池柊稀がそういうバッティングフォームをしていた。
彼らとは反対に淡白な動きで始動をスタートさせたのは4、5番の野尻と太田翔梧(2年)の2人だけ。強打者の2人にはあえて型にはめ込まず、他の選手には確実性を求めてセオリー重視のバッティングを施したということだろうか。いずれにしてもスターティングメンバー9人のうち7人がしっかりタイミングを取って打ってくる学校は多くない。
選手で注目したのは木更津総合の2番手投手、根本太一(2年)だ。春の関東大会で見たときは本格派の片鱗はのぞかせていたが、これほど早く140キロ台後半が飛び出すとは思わなかった。ストレートのこの日の最速は149キロで、変化球は大きい横変化のスライダーがあるくらいで球種の多い選手ではない。しかし、ストレートがあればそれだけで相手打者に〝圧″がかかるというくらい、根本のストレートは威力を秘めている。
今大会は投手陣に関しては3年生より1、2年生にイキのいい本格派が目立った。奈良大付戦で150キロを計測した日大三の井上広輝、さらに横浜の及川雅貴、創志学園の西純矢も既に150キロの大台を超えている。根本に関してはこの試合を勝ち上がったのでまだ見る機会は残されているので、見ていない人は是非、目に焼きつけてほしい。
(記事=小関 順二)