野村vs新居浜西
野村地区の「氣持ち」がこもった初回10得点
本来、たとえ高校野球であるとしても過剰な精神論は持ち込むべきではない。なぜなら、精神論に偏ると、その土台にある技術・戦術がボケてしまうからだ。がしかし、この試合においては、平成30年7月豪雨において地域が甚大な災害に遭った野村のベンチ・スタンドから発せられる「氣持ち」は新居浜西を終始圧倒していた。
もちろん、2015年・当時四国高校生最多となる高校通算36本塁打を放った田中 力(元:九州共立大3年)に代表されるように、野村の身体能力の高さは現チームでも健在。1番の入船 梓(3年主将・中堅手・173センチ63キロ・宇和ボーイズ出身)は、50メートル走6秒1、7番の武田 直樹(3年・二塁手・169センチ68キロ・宇和島市立広見中出身)も50メートル走6秒2の俊足強打。3番の二宮 怜央(2年・一塁手・180センチ76キロ・右投右打・西予市立野村中出身)、4番の宮川 凌雅(3年・左翼手・174センチ71キロ・西予市立肱川中出身)、5番の吉良 拓真(3年・右翼手・176センチ75キロ・右投左打・西予市立城川中)はいずれもフルスイングができる。
それを差し引いたとしても、俊足3番の田中 寿樹(2年・169センチ58キロ・左投左打・西条リトルシニア出身)や、中学時代は新居浜ヤングスワローズの左腕エースとして鳴らした秋月 大翔(1年・170センチ68キロ・左投左打)が、ベンチに控えていた新居浜西との実力差は「15対3」ほどではなかった。
では、この点差に至ったものは何か。それはやはり7月8日から今まで災害地域のボランティア活動を通じて「野村高校野球部が野村地区のシンボルでなければならない」意味を彼らが見出したからに他ならない。約37分間に渡った1回表の10得点を見ても、一死満塁から5番・吉良 拓真が放った先制右前適時打や、1点追加後の7番・武田の満塁走者一掃二塁打。さらに打者一巡して二死満塁での4番・宮川の右前2点適時打はいずれも詰まりながら野手の前に落としたもの。そこには「何としても出る・勝つ」想いがこもっていた。
野村の次戦は「夏将軍」松山商対宇和の勝者。そこに勝っても第4シード・西条などが待ち受ける。が、この試合で見せた「氣持ち」を続けることができれば……。野村地区の想いはきっと「悲願達成」になる。
(レポート=寺下 友徳)