樟南vs鹿児島実
伝統の一戦、意外な結末・樟南
樟南円陣の様子
樟南と鹿児島実。鹿児島球界を2分する強豪同士の対戦は、例え準々決勝といえどもギャラリーの数が段違いだ。一般のファン、ライバル球児、春休み中の野球少年らが多数、[stadium]鴨池市民球場[/stadium]に駆け付けた。
スタメン表を見て驚いた。樟南の先発がエース松本 晴主将（3年）ではなく、背番号11の宮下 尚哉（3年）だったからだ。
松本に何かアクシデントでもあったのかと考えたが、普通にキャッチボールをし、7回からは実際にマウンドにも上がっている。試合後「宮下君の先発は予定通りだったのですか？」と山之口 和也監督に尋ねると「良い選手は使わないと」と答えが返ってきた。公式戦での実績はなかったが、一冬で成長し、実戦で使えることは4回戦の尚志館戦で証明できた。
長丁場の夏を勝ち抜くことをにらんで、松本に続く投手陣の柱を作る上でも、樟南としては最大のライバル鹿児島実に宮下をぶつけることは大きなチャレンジだった。
立ち上がり、宮下は変化球の制球が定まらず、直球一本の単調な投球になったところを狙い撃ちされた。一死一三塁で鹿児島実は4番・板越 大剛（3年）がバックスクリーンに特大3ランを放り込む。得点こそならなかったものの5番・西村 僚祐（3年）、6番・西 竜我（3年）もヒットで続き、鹿児島実がワンサイドで押し切る雰囲気の序盤だった。
その雰囲気を樟南はすぐさま盛り返した。簡単に二死となった後、3番・石澤 凛汰郎（3年）がセンターオーバー二塁打で出塁。4番・松下 航太（3年）は先ほどのお返しとばかり、センターバックスクリーン左への2ランを放ち、1点差とした。
2回裏も二死二三塁とし、3番・石澤がセンター前2点タイムリーを放って逆転に成功。3回裏は一死意思塁で送りバントは決まらなかったものの、8番・宮下がエンドランを決めて右中間二塁打を放ち加点する。
5回は二死満塁から2番・吉川 海成（3年）がレフト前2点タイムリーを放つなど、チャンスを打線が確実にものにしてリードを広げた。
鹿児島実は5回途中から左腕・立本 颯（3年）にスイッチ。3連続三振で樟南打線の勢いを止めたかと思われたが、6番・川越 蓮（3年）がレフトスタンドにソロホームランを叩き込んで流れを継続する。
先発の宮下は初回こそ3失点を振るわなかったが、2回以降変化球の制球が安定し、直球との緩急を生かした投球で相手打線の狙い球を絞らせず、6回まで無失点と、監督の起用に応えた。
7回表からはエース松本がリリーフ。盤石の流れを作ると、8回裏、一死二塁で4番・松崎がセンター前にライナーのタイムリーヒット。ボールを後逸する間に松崎も生還し、7点差がついて試合終了。樟南打線が16安打でコールド勝ちという誰もが予想しない結末だった。
（文＝政 純一郎）
