試合レポート

東海大相模vs日本航空石川

2018.04.02

東海大相模、脚力を活かしベスト4へ

 拮抗した戦いになったとき勝負を左右するのが脚力である。私が俊足の基準にする打者走者の各塁到達タイム「一塁到達4.3秒未満、二塁到達8.3秒未満、三塁到達12秒未満」をクリアしたのは日本航空石川の0人に対して東海大相模は3人5回。過去16年間、ストップウォッチを持参してアマチュア野球、プロ野球を見てきた経験で言わせてもらえば、タイムクリアが多いチームの勝率はかなり高い。

 試合は拮抗した。1回裏、東海大相模は1番小松勇輝がフルカウントからのストレートをとらえて右中間に飛び込むホームランを放ち先制。日本航空石川も負けていない。4回表、明徳義塾戦でサヨナラ3ランを放った3番原田竜聖(3年)が四球で歩いたあと4番上田優弥(3年)がライト前ヒットで一、三塁とし、5番長谷川拳伸(3年)が右中間に二塁打を放ち三塁走者を迎え入れた。

 5回にも9番杉本壮志(3年)の二塁打と四球で2死一、二塁のチャンスを迎え、ここで東海大相模はエース、齋藤礼二をマウンドに送る。その後、16人の打者のうち3ボールのカウントになったのは4人。これを見ても齋藤のデキがいま一つだったことがわかるが、縦割れカーブ、横変化のスライダーを交え、リリーフ時を除けば、得点圏に走者を背負った場面でのピッチングは一度もなかった。ボールカウントを悪くしてもそこから崩れない安定感はさすがとしか言いようがない。

 日本航空石川の先発、杉本は東海大相模の強力打線をよく抑えた。ストレートのスピードは120キロ台後半から130キロ台前半と速くない。それでも投球フォームがいい。反動を使う動きがなく下半身が先導して上半身を前に導く投球の流れが秀逸。こういう投手は例外なくコントロールがいい。東海大相模が得点圏に走者を進めたのは3、6、8回の3イニングだけ。これを見てもいかに杉本のピッチングが安定していたかわかる。

 試合が動いたのは6回裏だ。東海大相模は先頭の9番佐藤暖起(3年)がセーフティバントを決める。驚かされるのは捕手で右打者の佐藤のこのときの一塁到達タイムが3.88秒と速かったこと。第1打席の一塁ゴロでも4.27秒で走っているので日本航空石川の守備陣はもう少し警戒してもよかった。1番小松の進塁打で二進すると2番山田拓也(3年)の二塁打で佐藤が還り、東海大相模に待望の勝ち越し点が入った。ちなみに、このときの山田の二塁到達タイムは8.11秒と速い。

 8回にも1死から佐藤が二塁打を放ち、2死後、3番森下翔太(3年)がレフト前にヒットを放って3点目を入れ、ようやく勝負を決するのだが、注文をつけたいことが1つだけある。東海大相模の各打者はストライクを見逃すことが多いのだ。6三振のうち見逃しが3つあり、杉本が投じた123球のうち見逃したストライクの数は31球。見逃し率は何と25パーセントにもなる。

 日本航空石川各打者の見逃がしの三振は1つもなく、見逃し率は18パーセント。私の統計によると日本航空石川が極めてノーマルな数値で、東海大相模の25パーセントは異常である。準決勝で対戦する智辯和歌山の準々決勝での見逃しの三振は1つもなく、見逃し率は14パーセント。この数字を比較して智辯和歌山戦はもう少し積極的なバッティングを期待したい。

(文=小関 順二

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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