試合レポート

智辯和歌山vs國學院栃木

2018.03.31

 第90回選抜高等学校野球大会8日目。第2試合では1回戦で英明(香川)、2回戦で延岡学園(宮崎)を下した國學院栃木(栃木)と、2回戦で富山商(富山)に競り勝った智辯和歌山(和歌山)が激突した。

試合は智辯和歌山が1回裏に3番・林 晃汰(3年)の左中間を破る適時三塁打で先制すると相手守備の乱れも重なり4点を先取。その後、2回裏には2番・西川 晋太郎(2年)の適時打、3回裏には1番・神先 恵都(3年)の適時打で、3回まで6対0と試合の主導権を握った智辯和歌山は、投げては大会初登板のエース・平田 龍輝(3年)が最速140キロの直球と切れのある変化球をコンビネーションで好投した。

一方の國學院栃木も終盤4点を奪い反転攻勢に転じたものの、序盤の失点を取り返すことはできず。智辯和歌山は平田が116球・9奪三振・完投で7対4で國學院栃木を下し、7年ぶりのベスト8進出を果たした。

なお、準々決勝に進出した智辯和歌山は大会10日目・第2試合で創成館(長崎)と対決する。

智辯和歌山・エースの「兆し」と主砲の「真価」

 上位から下位まで巧打・強打を備えた打線と実戦力の高い投手陣で1994年以来のセンバツ制覇を狙う智辯和歌山。そのキーマンはこの昨夏甲子園で活躍した2人。昨夏は甲子園2試合登板で9回を投げ9奪三振・防御率1.00の最速144キロ右腕・平田 龍輝(3年)と夏甲子園・興南(沖縄)戦をはじめ、高校通算33本塁打を積み上げてきたスラッガー・林 晃汰(3年)である。

 

 当然秋でも活躍を期待された平田と林。だが、平田は9試合を投げて防御率3.19に終わり、ストレートも常時130キロ台前半と力強い投球が影を潜めることに。そして林は右ひじの手術で公式戦未出場。そういう状況でも、近畿大会準優勝を決めたチーム力は流石であったが、智辯和歌山にとって2人が夏と同等以上の力を発揮することが、このセンバツでの必須要素となっていた。

 では、この試合での2人は?体調不良の影響で富山商(富山)で未登板だった平田には、この國學院栃木戦で復活の兆しが見えた。
ワインドアップから投げ込む速球は常時135キロ~140キロと勢いがあり、変化球もブレーキが利いた縦のスライダー。カーブ、横へのスライダーを低めに集める丁寧なピッチングを披露。2回戦の延岡学園戦で9得点を挙げた國學院栃木打線を3回まで無安打無失点に抑えた。速球中心だった昨夏の甲子園と比べると、投球の幅を大きく広げ、勝てる投手へ成長しようとしている。

 一方の林は初戦の富山商戦は力みからか5打数0安打に終わったものの、この試合での第1打席は1ストライク1ボールからの3球目に外角高めのストレートを捉えて、あっという間にレフトの頭を超える適時三塁打。180センチ90キロの恵まれた体型をフルに生かした豪快なスイングで大会注目スラッガーの片りんをのぞかせた。

 しかしその後は4打席凡退で通算は10打数1安打。大きく足を上げて、タイミングを取るためにバットを上下させる彼独特の「大きなヒッチ」がタイミングが遅れる一因となっている。

 準々決勝の相手は好投手5人を揃え、智辯学園(奈良)戦延長10回サヨナラアーチの3番・松山 隆一(3年)など打線にも魅力あふれる明治神宮大会準優勝の創成館(長崎)。中1日の日程で平田はどんな投球のレベルアップを、林は1日までどんな修正を施すのか?栄光の架け橋を築くために。そして「智辯」のユニフォームを高みに導くための挑戦は続く。

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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