試合レポート

創成館vs智辯学園

2018.03.31

創成館が逆転サヨナラ!松山のサヨナラ弾で初の8強入り

 第90回選抜高等学校野球大会の8日目。第3試合は、2回戦で日大山形(山形)を5対3で下した智弁学園(奈良)と、3対1で下関国際(山口)を下した創成館(長崎)が対戦した。

 先制したのは智弁学園だった。3回表、創成館の先発・七俵 陸(3年)は二死走者なしから3番・左向 澪(3年)に四球を与えると、牽制球を2球送るなど、1回に盗塁を2つ成功させている左向の足を警戒。これで打者への注意が散漫になったか、2ボール0ストライクとカウントを悪くすると、3球目の甘く入ったストレートを藤村 健太(2年)に弾き返され、左中間を深々と破る適時二塁打で1点を奪われた。

智弁学園の先発・伊原 陵人(3年)は130km/h後半から140km/hのストレートに勢いがあり、創成館打線を詰まらせる打球が目立った。また、2回裏は二死二塁から徳吉 涼太(3年)の右中間に飛んだ浅い打球を中堅手・左向がダイビングキャッチ。5回裏は平松 大輝(3年)のバントヒットをきっかけに二死満塁とされ、松山 隆一(3年)には一塁線に鋭い打球を打たれるが、一塁手の藤村がグラブを伸ばしてナイスキャッチと、守備陣も好守で盛り立てた。

伊原は終盤になっても球威が落ちず、中盤からはスライダーやカーブも織り交ぜ6回、7回は三者凡退。8回は四球を出すも三振ゲッツーで切り抜け、完封目前まで迫ったが9回裏、ここからドラマが動き出す。

創成館は先頭の4番・深見 直人(2年)が低めのストレートをレフトへヒット。続く野口 恭佑(3年)は初球のバントをファウルにすると、2球目は一転バスターに切り替え三遊間を破る左前打。鳥飼 悠斗(3年)はきっちりバントで送り、一死二三塁のチャンスを作る。ここで平松はセンターへ浅い飛球。タッチアップができるか微妙な飛距離だったが、なんと前進してきた中堅手がフライを落球。三塁走者が気になったのか落下地点を見誤ってしまった。思わぬ形で同点に追いつかれた智弁学園は満塁策をとり、二番手・川釣 聖矢(3年)にスイッチ。一死満塁で代打の埜川 希龍(3年)を迎えると、フルカウントから高めの真っ直ぐでショートゴロ。ダブルプレーに打ち取り、逆転は許さなかった。


今大会初の延長戦にもつれこんだ試合を決めたのは劇的な一発だった。10回裏、創成館峯 圭汰(3年)、杉原 健介(3年)が共にセンター後方へ飛球を放つが、左向のファインプレーに阻まれ2アウト。ここで打席に立ったのは、今大会ノーヒットの松山だったが2ボール1ストライクからの4球目、高めに浮いた外寄りのスライダーをセンターへ。左向が三たび背走するが、打球は頭上を越えてそのままスタンドへ。これがバックスクリーン左へ飛び込むサヨナラホームランとなり、創成館が2対1で智弁学園を下し、初のベスト8進出を決めた。

智弁学園は1回表に二死二三塁、2回表には一死一二塁、さらに3回表、1点を取った後の二死二塁と序盤は再三、チャンスを作ったが牽制球で2度刺されるなど好機を逸したのが最後に響いた。また、9回から起用した川釣は得意のフォークが決まらず、継投策が上手くいかなかったのも誤算だった。

創成館の影のヒーローは4回から登板した酒井 駿輔(3年)。130km/h後半のストレートに加え、右打者にはスライダーやスプリット。左打者にはキレ味抜群のチェンジアップで翻弄し、9回までの6イニングを1安打無失点。酒井はケガもあって、昨秋の公式戦では登板がなかったが、冬の地道なトレーニングを経て成長。2学年で25人もいるという投手陣の厳しい競争を勝ち抜いてベンチ入りを果たした苦労人。努力は必ず報われる訳ではないが、夢の舞台である甲子園で躍動したその裏側には、やはりひたむきな練習の日々があったのだ。

(文=大平 明

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.04.26

【春季四国大会逸材紹介・高知編】2人の高校日本代表候補に注目!明徳義塾の山畑は名将・馬淵監督が認めたパンチ力が魅力!高知のエース右腕・平は地元愛媛で プロ入りへアピールなるか!

2024.04.26

【奈良】智辯学園が13点コールド!奈良北は接戦制して3回戦進出!<春季大会>

2024.04.26

今週末に慶應vs.横浜など好カード目白押し!春季神奈川大会準々決勝 「絶対見逃せない注目選手たち」!

2024.04.26

【春季奈良県大会】期待の1年生も登板!智辯学園が5回コールド勝ち!

2024.04.26

古豪・仙台商が41年ぶりの聖地目指す! 「仙台育英撃破」を見て入部した”黄金世代”が最上級生に【野球部訪問】

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.23

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.24

春の埼玉大会は「逸材のショーケース」!ドラフト上位候補に挙がる大型遊撃手を擁する花咲徳栄、タレント揃いの浦和学院など県大会に出場する逸材たち!【春季埼玉大会注目選手リスト】

2024.04.23

【春季埼玉県大会】地区大会屈指の好カードは川口市立が浦和実を8回逆転で下し県大会へ!

2024.04.22

【和歌山】智辯和歌山、田辺、和歌山東がベスト8入り<春季大会>

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.23

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.05

早稲田大にU-18日本代表3名が加入! 仙台育英、日大三、山梨学院、早大学院の主力や元プロの子息も!

2024.04.02

【東京】日大三、堀越がコールド発進、駒大高はサヨナラ勝ち<春季都大会>

2024.04.12

東大野球部の新入生に甲子園ベスト4左腕! 早実出身内野手は司法試験予備試験合格の秀才!