日本航空石川vs明徳義塾
徹底したストレート狙いが劇的な逆転サヨナラ弾を呼ぶ
サヨナラ本塁打を放った原田竜聖(日本航空石川)※写真提供 共同通信社
初戦の中央学院戦、4対5で迎えた9回裏に谷合悠斗(3年)の3ランでサヨナラ勝ちした明徳義塾がこの日本航空石川戦ではお返しをされた。1対0で迎えた9回裏、マウンドには明徳義塾のエース、市川悠太(3年)がいた。中央学院戦の11奪三振に対し、この日は6回まで3安打に抑えながら奪三振はゼロ。ここにサヨナラホームランを喫した要因がありそうだ。
中央学院戦では確認できただけで、変化球で奪った三振が4個あった。この変化球がこの日は少なかった。最速146キロのストレートがよく走り、ストレート勝負に行った分、三振が減ったと考えていい。伏線はあった。4回の的場拓真のセンター前ヒット、5回の夏川風眞のレフト前ヒット、井川隼吾のレフト前ヒットはすべてストレートを打ったものだ。±10キロのスピード差で操るスライダーはキレがいい上に投げられる割合が少ないので最初から捨てて、狙うのはストレート、それでも市川のストレートは威力を秘め、日本航空石川戦打線は8回までとらえ切れなかったということだろう。
しかし、中央学院戦でも市川は8回に4四死球、2安打で4点を献上している。0対1で迎えた9回裏、日本航空石川は6回にヒットを打っている井川が初球をライト前に運んで出塁、やはり4回にヒットを打っている井川がフルカウントの末、四球で歩いて無死一、二塁。中央学院に4点を奪われた8回のシーンが蘇った人もいただろう。そして、3番原田が初球のストレートを左中間スタンドに放り込んで、初出場校の8強進出が決まった。
勝利の立役者は原田だけではない。先発の左腕・杉本壮志(3年)、3番手の重吉翼(2年)が辛抱強いピッチングで明徳義塾の攻撃をよくかわした。杉本は1回裏、初戦でサヨナラホームランを放っている4番谷合にチェンジアップなど縦の変化球を続けて三振に取っている。4回にはやはり谷合に変化球を3球続け、意表をついた4球目のストレートをセンター前に運ばれているが、チェンジアップを投げていれば打ち取れただろう。
ストレートは中盤以降ほとんど120キロ台にとどまり、多投したのがカーブ、チェンジアップなどの変化球。正直、これほど変化球に見どころがあるとは想像しなかった。8回途中まで投げ、1死二塁になったところ2番手の大橋修人にマウンドを譲っているが、このリリーフは不安だった。初戦の膳所戦にも登板し、1イニング2四球というパッとしない内容だったからだ。悪い予想は的中し、大橋は9番打者にレフト前ヒットを打たれ1死一、三塁とし、1番打者に暴投を投げて1点を献上。8回というイニングを考えればこれで明徳の勝利が決まったと思った。
3番手で登板した重吉が9回に満塁のピンチを背負いながら、7番打者を3-2-3の併殺に打ち取り、9回裏の攻撃につなげたことも大きい。
(文=小関 順二)
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