星稜vs富島
試合の流れを掴んだ星稜が3回戦進出を決める
第90回選抜高等学校野球大会の7日目。第1試合は13年ぶり12度目の出場となる星稜(石川)と、春夏通じて甲子園初出場の富島(宮崎)が対戦した。
竹谷 理央(3年)、奥川 恭伸(2年)と140km/hを超えるストレートを持つ2枚の投手を擁する星稜と、エース・黒木 将胤(3年)を中心に全員野球で戦う富島の一戦。
1回表、富島は二死から川添 大空(3年)が四球を選んで出塁すると、4番・井本 健太(3年)はライト線へポトリと落とすヒット。右翼手の打球の処理に時間が掛かっているのを見て、一塁走者の川添は三塁を回って一気にホームを狙うが本塁寸前タッチアウト。先制を逃すと、ピンチを切り抜けた星稜は1回裏、南保 良太郎(3年)のツーベースと2四球で二死満塁とし、6番・河井 陽紀(3年)はショートへ痛烈な当たり。これが強襲安打となって1点を挙げた。
しかし、富島も3回表、四球の窪田 晃誠(3年)を一塁に置いて、1番・松浦 佑星(2年)がライトオーバーのスリーベース。続く中川 大輝(3年)も高めの真っ直ぐを振り抜きライトへタイムリーを放って、逆に1点のリードを奪った。
3回裏、富島は逆転した直後だけになんとか無得点に抑えたいイニングだったが、先発の黒木将は2者連続で四球。無死一二塁で4番の竹谷を迎えると、ストレートが高めに浮いてしまい一二塁間を破るタイムリーを浴びて同点。
さらに一三塁の場面で、黒木将は5番・西岡 秀太(3年)に対し、外角のスライダーを引っ掛けさせてサードゴロ。ゲッツーシフトを敷いていた富島内野陣の注文通りだったが三塁手が二塁へ悪送球。3対2と再逆転されると、ここで集中が切れたか黒木将は高めにボールが集まり始め、続く河井は深々とセンターへ犠牲フライ。鯰田 啓介(3年)は前進守備の二塁手の後方に落ちるタイムリー。さらに山瀬 慎之助(2年)には右中間を破る適時二塁打を打たれてしまった。
その後も暴投で失点を重ねると、最後はエラーで許した走者を南保の右越え二塁打で返され、この回、まさかの7失点。4回裏には死球と二盗でピンチを招き、ここで黒木将は無念の降板。星稜は代わった黒木 拓馬(2年)を二死二三塁と攻め、山瀬が高めに甘く浮いたスライダーを捉えてレフトオーバーの2点適時二塁打を放ち、得点を2ケタに乗せた。
3回途中からマウンドを引き継いだ星稜の奥川は最速144km/hのストレートを中心に力のピッチング。6回2/3を投げて、富島打線を散発5安打に抑え無失点。三振も6つ奪って悠々と逃げ切り、星稜が11対2で富島を下した。
3回裏の星稜の7得点が試合の行方を決めた試合だったが、ポイントに挙げたいのは2つ。まずは1点ビハインドの無死一二塁の場面で打席に立った4番の竹谷。この試合では星稜のエースとして先発マウンドを任されたが3回途中で逆転を許してしまいノックアウト。その直後の攻撃で併殺打なら反撃のムードを絶ってしまうところだったが、しっかりと気持ちを切り替えて名誉挽回の同点タイムリー。このようにピッチングがダメでも、バッティングで取り返す。バッティングがダメでも走塁で、守備で、あるいは声でと、できることは一つではないわけで、どんな形でもチームに貢献したいという気持ちが呼び込んだビッグイニングだったと言えよう。
もう1つのポイントとなったのは、やはりミス。富島は3回裏だけでエラー3つ、暴投1つ。四球も2つあった。守り勝つ野球が信条なだけに、こうした思わぬミスの連鎖が大敗を招く結果となってしまった。
(文=大平 明)
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