乙訓vsおかやま山陽

　第90回選抜高等学校野球大会の6日目。第2試合は春夏通じて甲子園初出場の乙訓（京都）と、昨夏に続き2季連続出場となるおかやま山陽（岡山）が共に甲子園初勝利を目指して対戦した。

　富山 太樹（3年）、川畑 大地（3年）、の左右のWエースに公式戦3本塁打の宮田 康弘（3年）を擁し、公立校ながら昨秋の近畿大会で4強まで勝ち上がった乙訓と、長打力がある森下 浩弥（3年）、井元 将也（3年）など昨夏の甲子園経験者が6人残り、中国大会の決勝では9点差を逆転してサヨナラ勝ちを収めたおかやま山陽の一戦。

　おかやま山陽は1回裏、乙訓の先発・富山から小野 剛昌（3年）が左中間を破るツーベース。その後、犠打などで二死三塁とし4番・井元が高めに浮いたスライダーを強振。これがレフトスタンドへ飛び込む2ランホームランとなり2点を先制した。
　乙訓も負けてはいない。すぐに2回表、二死走者なしから8番・伊佐 駿希（3年）がストレートの四球で出塁すると、富山が浅めの左翼手の頭上を越す適時二塁打で1点を返した。

　その後はピンチを凌いでいった富山。2回裏は3連打で一死満塁とされるが、森下をインハイのストレートでファーストフライ。前の打席でホームランを打たれた井元も高めの真っ直ぐでセカンドフライに打ち取ると、3回裏も2四死球とミスで二死二三塁とされるが、9番・小野 凌（3年）をキャッチャーファウルフライに抑えた。その奮投に応えるように、5回表の乙訓は大上 翔也（3年）に二塁打をきっかけに内野ゴロの間に同点。6回表には薪谷 宗樹（3年）の右中間三塁打で勝ち越すと、伊佐、浅堀 大暉（3年）にもタイムリーが出るなどこの回に5安打を集中。一挙、4点を挙げた。

　一方、5回からマウンドに上がった乙訓の二番手・川畑は右腕から140km/hを超えるキレのある速球を投げ込み、おかやま山陽打線に付け入る隙を与えない。7回裏は一死から四球で初めて走者を許すが、森下をフォークでセカンドゴロに打ち取り併殺。そして、9回表に自らダメ押しのタイムリーを放った川畑は、9回裏も代打・木村 龍一朗（3年）から高めのボール球の真っ直ぐを振らせて空振り三振を奪うなど5イニングを無失点。おかやま山陽は二死から小野、利光 康生（3年）の連打で意地を見せるも森下がショートフライに倒れてゲームセット。7対2で乙訓がおかやま山陽を下し、甲子園初出場で初勝利を挙げた。

　乙訓は継投策が見事にはまった。先発の富山は毎回、走者を許したが2回以降は要所を抑えるピッチング。川畑は同点に追いついた直後の5回に、この試合で初めておかやま山陽打線を三者凡退に打ち取るなど、緩急を付けた快投でチームに流れを引き寄せた。

　おかやま山陽の先発・有本 雄大（3年）と川上 雅稀（3年）も配球面では工夫を見せていた。1回表の乙訓は先頭の大上が俊足を生かしてセカンド内野安打で出塁すると2番・大西 陽大（3年）との間でエンドランを敢行。打球は一二塁間を抜け、三塁へ向かった一塁走者を刺そうとした右翼手の悪送球もあり、いきなり無死二三塁。ここで有本は、3番・浅堀を見逃し三振。4番・宮田には痛烈なライナーを打たれるも前進守備のショートの正面。5番・15615（3年）はピッチャーへの力のないライナーで打ち取った。

　特に、浅堀と中川に対してはアウトコースを攻めて追い込み、内角の直球で勝負。4回表の二死三塁のピンチも、富山を高めの速球で追い込んでから、インローの変化球でセカンドゴロに打ち取るなど、ホームベースを広く使った攻めを見せていたが、6回表は右打者の内角をついた真っ直ぐを薪谷と伊佐に上手く右方向へ弾き返され、その後は粘りきれずにボールがやや内側に入ったところを痛打されてしまった。

（文＝大平 明）