明徳義塾vs中央学院
谷合の劇的な一発で明徳義塾が3回戦進出!
第90回選抜高等学校野球大会の3日目。第1試合は3年ぶり18回目の出場となる明徳義塾(高知)と、春夏通じて甲子園初出場の中央学院(千葉)が対戦した。
昨秋の四国チャンピオンで公式戦10試合をすべて一人で投げ切ったエースの市川 悠太(3年)に加え長打力のある重量打線を擁する明徳義塾と、二刀流で注目を浴びる大谷 拓海(3年)を中心に関東大会を制した中央学院。明治神宮大会では明徳義塾が5対3で中央学院を下してそのまま優勝まで駆け上がったが、甲子園での再戦の結果はいかに?
大谷を1番で起用する奇策を用いてきた中央学院。この打順を生かすためにも初回から得点を挙げてチームを勢い付けたいところだが、1回表。先頭の大谷がライト前ヒットで出塁。145km/hの真っ直ぐを含む、全球、厳しい内角攻めだったが腕を畳んでライトへ運んだ一打だった。そして、2番の平野 翔(3年)の犠打で走者を二塁へ進め、ここまで目論見通りだったが、宇田 周平(3年)はレフトフライ。4番に抜擢された高鹿 隼人(2年)は外角のスライダーにまったくタイミングが合わず空振り三振に打ち取られてしまった。
一方の明徳義塾はその裏、四球と犠打にピッチャー・大谷の野選も絡み二死二、三塁とすると5番・中隈 廉王(3年)がセンター前にポトリと落とすタイムリーヒット。続く6番・安田 陸(2年)はセンターオーバーの2点適時二塁打を放ち3点を先制。ノーヒットで作ったチャンスを確実にものにした。
反撃したい中央学院は4回表にヒットの平野を一塁に置いて、宇田が右中間へ適時二塁打を放ち1点を返すと、さらに5回表。エラーで出た走者を送りバントで進めると、二死二塁の場面で大谷が打席へ。対する市川は、またもインコースを主体にした攻め。内角の真っ直ぐでファウルを打たせると、2ボール2ストライクから最後も143km/hの内角のストレートで腰を引かせて見逃し三振を奪い、追加点を許さなかった。
そして、試合が大きく動いたのは8回表。一死から大谷と4度目の対決を迎えた市川だが急に制球を乱して四球を与えると、さらに2者連続デッドボールで満塁。ここで、スライダーにまったくタイミングが合ってなかった高鹿が初球のスライダーを叩いて、レフトへ同点の2点適時打。さらに、四球で満塁とすると7番・西村 陸(3年)も外寄りのスライダーに食らいついてセンターへ2点タイムリーを放ち、逆転に成功した。
しかし、ドラマは終わらない。8回裏に安田のタイムリーで1点差とした明徳義塾は9回裏。二死から、田中 闘(3年)のヒットと死球で一二塁とすると、打席にはここまでノーヒットの4番・谷合 悠斗(3年)。1ボール1ストライクから139km/hの高めのストレートを強振すると、打球はバックスクリーンへ消える逆転サヨナラ3ラン。7対5で明徳義塾が中央学院を劇的な一発で下し、3回戦進出を決めた。
中央学院の大谷は最速140km/hのストレートとスライダーを低めに集めて粘りの投球を見せたが、谷合への最後の一球が甘くなり、目前まで手にしていた勝利を逃してしまった。
一方、明徳義塾の市川は強打者・大谷に対し、明治神宮大会で真ん中外寄りのボールをレフトスタンド中段へホームランされたのを教訓に、徹底したインコース攻めを貫きヒットは第1打席の単打1本しか許さなかった。それにしても、8回、9回と二死走者なしから合計4点を奪った明徳義塾の繋ぐ野球は見事だった。
(文=大平明)