日本航空石川vs膳所
日本航空石川が快勝!6回の攻防が勝負の明暗を分ける
第90回選抜高等学校野球大会の2日目。第3試合は昨夏に続く2季連続出場となる日本航空石川(石川)と、創立120周年を迎える伝統校で21世紀枠により59年ぶり4回目の出場を果たした膳所(滋賀)が対戦した。
昨秋、11試合で96得点を挙げた攻撃力を誇り序盤からどんどん得点を奪っていきたい日本航空石川と、少ない点差で中盤までくらい付き終盤勝負の接戦に持ち込みたいデータ野球の膳所の一戦。
1回表の膳所は、日本航空石川の先発・背番号11の重吉 翼(2年)の立ち上がりを攻め、2番・有川 耀翔(3年)が中前打。二死から4番・川村 いつき(3年)もセンター前ヒット、5番・今井 竜大(3年)は四球でつなぎ満塁とする。しかし、6番・星田 昌慶(3年)はレフトフライに倒れ、先制のチャンスを生かすことができなかった。
一方、膳所の先発はエースの手塚 皓己(3年)。130km/h前後のストレートとスライダーのコンビネーションで打ち取っていく投手だが、何と言っても目についたのが守備陣のポジショニングだ。データ分析専門の部員が2人いるという膳所は相手チームの打球傾向を分析。そのデータに基づき極端な守備位置をとっていた。
そして1回裏、日本航空石川の2番・的場 拓真(3年)の右中間への飛球は右寄りに守っていた中堅手・伊東 篤志(3年)が難なくキャッチ。二死二塁で左打ちのスラッガー・上田 優弥(3年)を打席に迎えた時は、三塁手が三遊間、遊撃手は二塁ベースのやや左側の後方に位置、外野手はフェンス手前まで下がり左翼手と右翼手はそれぞれ左中間と右中間を詰めてポジションをとった。すると、このフォーメーションが功を奏し上田のセンターへ抜けようかという打球をショートの渡辺 大夢(3年)が正面で処理。無失点で切り抜けた。
この極端なシフトをとる膳所の予想を超える出来事が起こったのは4回裏。日本航空石川は3番の原田 竜聖(3年)がライト前ヒットで出塁。ここで打席に立った上田に対し、膳所は前の打席と同じシフトを敷いて対応するが、低めの変化球を捉えた打球は左中間へ。初めから右寄りに守っていた左翼手が追いついたかに見えたが、打球が最後に一伸び。ジャンプしたレフトの必死で伸ばしたグラブを弾くタイムリーツーベースとなり先制。続く長谷川 拳伸(3年)もレフト前へ弾き返し、日本航空石川が2点を挙げた。
そして、勝負の明暗を分けたのは6回の攻防だった。2回以降、130km/h後半のストレートを中心にした組み立てで好投を続けていた重吉に対し、6回表の膳所は先頭の有川が右前打を放ち、無死一塁。ここでベンチは送りバントのサインを送るが2度、ファウル。最後は外角のストレートを見逃して三振し、後続の打者も凡打に抑えられ、走者を進めることすらできなかった。
逆に6回裏の日本航空石川は左安打の原田を一塁に置いて、上田が一二塁間を破るヒット。膳所は二塁手が一二塁間を詰めていたのにも関わらず、またもや想定を超える痛烈な打球で抜かれてしまった。そして、左に寄っていた右翼手は打球に追いつくのに時間がかかったため、一塁走者が長駆ホームイン。その後、暴投で点差を4点に広げた日本航空石川は7回に1点、8回には5点を加え、終わってみれば10対0で膳所を下し、快勝した。
中盤までは狙い通りのロースコアの展開に持ち込んだ膳所だったが、2度の無死一塁のチャンスで共に送りバントを失敗。結局、日本航空石川の3投手に前に4安打に抑えられ完封負けを喫した。しかし、試合を通じてとっていた極端な守備シフトはヒット性の打球を未然に防ぐケースが多く見られ有効な手段となったことから、前評判通りのデータ野球はまっとうすることができたと言えよう。
(文=大平明)
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