聖光学院vs東筑
東筑右サイド・石田 旭昇の「創意工夫」を探る
23日から始まった第90回記念選抜高等学校野球大会。開会式後の1回戦・聖光学院(福島)と東筑(福岡)の一戦は両者拮抗した好勝負の末、9回表に2点を勝ち越した聖光学院が勝利。大会第5日・第1試合で東海大相模(神奈川)が待つ2回戦へと駒を進めた。
この試合の大きな焦点。それは昨夏甲子園エースとして君臨した東筑の右サイド・石田 旭昇(3年)と、チーム打率.389を誇る聖光学院打線との遭遇である。
初回から聖光学院は初球攻撃を仕掛ける。1番・田野 孔誠(3年)は石田の甘く入ったスライダーを逃さずクリーンヒット。二死一・三塁から5番・須田 優真(3年)が放った先制打への流れを作る。1回裏・東筑打線に逆転を許しても、彼らの姿勢は揺るがない、2回表はなんと先頭打者から4人連続の初球攻撃で一死三塁から1番・田野が同点犠飛。東筑・石田へすさまじいプレッシャーをかけた。
だが石田はこのピンチを「創意工夫」で乗り切ってみせた。3回表は一死から4番・五味に対し緩いスライダーを2球続けた上で、最後は高めのストレートで空振り三振。須田に対しても内角へ厳しくツーシームを投げ込み遊ゴロ。その後はこれまで130キロ前半のストレートとスライダーをコンビネーションにする技巧派サイドのイメージを一変させる投球を展開する。
冬のトレーニング強度が明らかに解る腰回りの太さを利し、左足を踏み込んでからの速い腕振りと鋭い軸回転を続ける石田。スコアボードの球速は常時130キロ中盤から後半。最速140キロ。までスピードアップ。変化球もスライダー、ツーシーム、カーブ、球速が遅いスライダーと多彩な球種をストライクゾーンに投げこんだ。
結果、昨夏甲子園1回戦・済美戦では5回裏に逆転を許し、7回3分の1を10安打10失点(自責点6)で途中降板した石田は、8回3分の1で同じ10安打を許すも5失点(自責点1)。9回表に2番・横堀 航平(3年)の決勝スクイズ<記録は二塁内野安打>などで2点勝ち越しを許し、またも初戦で姿を消すこととなったとはいえ、石田の粘りが東筑に勇気を与えたことは間違いない。
ただ、大事なのはここから。この夏は100回記念大会に伴う福岡大会南北分割によって北福岡で戦う東筑には、2014年から2016年まで3年連続選手権出場の九州国際大付や、飯塚など強豪校が多く待ち受ける。
この日、豊富な引き出して相手を崩しにかかる聖光学院からの学びを糧とできれば……。「石田伝説・第三章」は東筑の3季連続甲子園、さらに22年ぶりの聖地1勝へ続く大きな原動力となることだろう。