試合レポート

明徳義塾vs静岡

2017.11.13

明徳義塾が底力見せつける、8回長打攻勢で一気に静岡を逆転

明徳義塾vs静岡 | 高校野球ドットコム
本塁打を放った谷合悠斗(明徳義塾)

 ここまでくると、ある程度は来春のセンバツを見据えた戦いにもなっていくのだろうけれども、明徳義塾が力を見せつける逆転勝ちで、来春も手ごわいぞと思わせる戦いぶりだった。

 7回まではむしろ、ほぼ静岡の流れで試合が進んでいた。明徳義塾は、安打は出てはいるものの、もう一つ繋がっていかず、2回に右前打の谷合君をバントで進めて、8番市川君の二塁打で帰した1点のみだった。静岡の先発左腕静岡鈴木翔也君に、ここという場面で左腕独特の大きなゆっくりとしたカーブを投げられるとタイミングが合わないでいた。

 何となく、そのまま3対1で行ってしまいそうかなと思われていた8回。明徳義塾は一気にひっくり返した。

 この回、明徳義塾は先頭の5番安田君が左中間二塁打で出ると、続く谷合君は初球を狙いすましたかのようにスイングして打球は左中間スタンドに飛び込んだ。これでたちまち同点となった。谷合君はこの試合では6番を打っているが、元々は4番打者でもあり、一発長打は持ち味でもある。ただ、このところはやや調子を落としていたということもあって、6番に置いていたということだが、明徳義塾としては代わりに4番における打者がいるということで、層も厚くなっているということも言えそうだ。

 強烈な一発を浴びて、静岡ベンチはここまで好投してきた静岡鈴木翔也君を諦めて、エースナンバーをつけている春翔一朗君を投入した。しかし、春君の代わり端も、7番中隈君が攻めて、左中間へ二塁打し、バントで三塁へ進む。9番藤森君のところでは、馬淵史郎監督は「スクイズも考えた」というが、結局は三振で二死。しかし、1番に返って眞鍋君が右中間へ二塁打して三塁走者を帰す。さらに、田中 闘君も右越二塁打でもう1点を追加してこの回4点となった。明徳義塾は8回だけで、本塁打と二塁打4本という長打攻勢で一気にその爆発力を見せつけたという形になった。



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先発の鈴木翔也(静岡)

 そして、尻上がりに調子を上げていった明徳義塾の先発市川君は7~9回は静岡打線を無安打に抑えていた。ことに、9回は死球こそ一つ与えてしまったものの、「あの回はよかったね」と、馬淵監督も褒めていたように、市川君の投球内容は素晴らしかった。

 こうして明徳義塾は、見事な強打で一気に試合をひっくり返したのだが、馬淵監督は、「ヒット15本打っといて、5点やからね」と苦笑しながらも、「初回は一死満塁で安田の投手ライナー併殺でしょう。今日は、ついとらんなぁと思っていたんですよ。それでも、谷合の本塁打で息吹き返したね。あの本塁打は無理して強引に打とうとしないで、反対方向へもっていこうという意識があったからよかったんやね」と、力というよりも技ありの一本を評価した。そして、その一発で確実に流れが変わったことは実感していた。

 チームの方針としては、「流れが悪いゲームもひっくり返せるだけの打力をもって打ち勝てるチームとしていくこと」を目指しているというが、この試合では間違いなくそんなチームに近づいているということを示した。

 静岡は初回に三塁打の2番齋藤 來音君を4番成瀬君の右中間二塁打で帰して先制。すぐに同点とされたものの、4回には四球の成瀬君を失策で進めて、小林 晃輝君の二塁手の横を破る安打で再びリードし、6回も死球の成瀬君をバントで進めると、またまた小林君の安打で帰すという形でリードを広げていき、ここまでは文句なく静岡の流れの試合となっていた。それだけに、8回が悔やまれる。

 栗林俊輔監督は、「(静岡鈴木翔也投手は)7回までは、カーブが上手くはまっていたのですけれども、8回は明徳さんの本来の力が出たということでしょうか」と、脱帽していた。「5点以内に抑えて、6点以上取ろうと考えていたのですけれども、結局打線が打てなかったということです」と、失点よりも、追加点を奪いきれなかったことを悔いていた。それでも、「秋季大会からここまで、多くの試合をしていきながら、来春へ向けてやっていかなくてはいけないことが見えてきました」と、この秋のチームとしての成長を感じていた。

(文=手束 仁
(撮影:img029… 佐藤純一

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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