高知追手前vs伊野商
進学校・高知追手前「直接外」をプレーにつなげベスト4へ!
試合前挨拶へ全力疾走する高知追手前の20選手
スタンドや試合開始・終了時の挨拶は常に90度。四球を得てもバットはそっと地に置くか、次打者・バット引きに託す。もちろん全力疾走は絶対に欠かさない。
「細かいところの動きがよくなった」。前任の須崎工に引き続き2014年の同校監督就任後から双方向への観察力を駆使しつつ、細部にまで礼儀を行き届かせる指導を貫いてきた37歳・常廣 直樹監督はその出来に決して納得してはいなかったが、それでも新人戦ベスト4進出で秋のシードを獲得した高知追手前はこの伊野商戦でも着実にこの「直接外」をプレーにつなげていった。
攻撃面で最もその効果が現れたのは3回表と6回表の得点シーン。3回表は二死二・三塁から3番・山本 琳太郎(2年・一塁手・176センチ78キロ・右投右打・高知大学教育学部附属中出身)が「1打席目は変化球が入っていなかったので、ストレートで来ると思った」と、三直に打ち取られた伊野商・細川 晃希(2年・投手・右投右打・173センチ68キロ・高知市立朝倉中出身)、川村 大和(1年・捕手・172センチ65キロ・右投右打・高知市立城西中出身)の配球を見極めた上で、甘いストレートを中前に先制2点適時打。
3対1となった6回表には、先頭の4番・阿部 絃久(2年・右翼手・左投左打・174センチ70キロ・高知市立朝倉中出身)がライト線の浅いヒットで一気に二塁を陥れると、一死三塁からの三塁ゴロで素晴らしいスタートを見せてチーム4点目を奪取。試合の流れを伊野商に渡さなかった。
さらに高知追手前は最速137キロ左腕の岡林 倖生(2年・投手・左投左打・169センチ63キロ・高知市立潮江中出身)、主将で打線でも5番の中山 歩武(2年・捕手・164センチ61キロ・右投右打・日高村佐川町学校組合立加茂中出身)バッテリーもよく周囲が見えていた。準決勝までは2週間試合が空くことを考慮し、伊野商戦では「変化球はスライダー中心」を事前打ち合わせ。結果的に2失点9奪三振4四死球完投まで128球を要したが、ネット裏から見つめる他校スカウティング部隊や当該校選手たちに準決勝以降で見せたいイメージとは異なるものを刷り込むことに成功している。
かくして4年ぶりに大会ベスト4に進んだ高知追手前。55年ぶりに大会ベスト4に進んだ2013年秋は3位で秋季四国大会初出場を果たすも、初戦で今治西に1対22(5回コールド)から4年ぶりに巡ってきたチャンスを前に、主将の中山はこう言い切った「新チームからの目標は四国大会に出て勝つことです」。
それこそが、旧制・城東中のエースとして1946年夏・1947年春に高知県勢初の甲子園出場を果たし、後に慶應義塾大でエース・監督として球界に大きく貢献し前田 祐吉氏(2016年・85歳で逝去)ら偉大な先人たちに報いるための唯一無二の方法。最後も90度礼をして春野を後にした高知追手前は10月14日、掲げた目標の先にある栄光への架け橋を渡りにいく。
(レポート=寺下 友徳)
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