東海大菅生vs三本松
唯一の公立校・三本松敗退。捕手寄りポイントでミート貫いた東海大菅生に軍配
東海大菅生(西東京)vs三本松(香川)
今大会、公立高校の投手でストレートが140キロを超えたのは、滝川西の高島 泰都(141キロ)、高岡商の山田 龍聖(143キロ)、鳴門渦潮の野口 智哉(143キロ)、波佐見の隅田 知一郎(143キロ)、そしてこの日出場した三本松の佐藤 圭悟(141キロ)の5人。
つまり今大会出場した公立校8校のうち5校の投手が投手の評価基準の1つ「140キロ超え」を実現している。これは「スピードは天性のもの」という定説を覆すもので、公立校の可能性を感じさせる。
三本松・佐藤のよさは速さだけではない。120キロ前後で横変化するスライダー、114、5キロで縦変化するカーブやチェンジアップのキレもよく、3回裏にはヒットで出塁した小玉 佳吾(3年)を一塁けん制で殺している。この投手としての総合力が同校の準々決勝進出の原動力になったことは間違いない。この佐藤に対して東海大菅生打線は1回から襲いかかった。
一死後、2番松井 惇(3年)がセンター前ヒットで出塁すると3番小玉が右中間に2ランを放って早々と先制。さらに攻撃の手はやまず、4番片山 昂星(2年)が左中間に二塁打、二死後に6番佐藤 弘教(3年)がレフトに二塁打を放ってこの回3点を入れる。
ここで目についたのは東海大菅生打線の自信である。どの打者も好投手・佐藤に対して捕手寄りのポイントでミートしていた。このミートポイントは差し込まれる恐れがある半面、確実性も上がる。いわば〝諸刃の剣″とも言えるものだが、東海大菅生打線は可能性のほうに懸け、それが1回裏に早くも結実した。
3回には小玉がヒットで出塁、この小玉が前記のようにけん制で殺されるが、4番片山が右中間に三塁打を放ちひと息つく余裕も与えない。ちなみに、このとき私は片山が二塁で止まると思っていた。たいして足の速くない片山が二塁打性の打球にもかかわらず好走塁で三塁を陥れる。ここに東海大菅生打線の並々ならぬ意欲が感じたのである。
個人的に目立ったのは東海大菅生の遊撃手、田中 幹也(2年)の好守備だ。2回表に浦上 統也(3年)が放った三遊間への深い打球を倒れ込んで好捕、すぐに立ち上がってノーバウンドの大遠投を試みている(記録は内野安打)。6回の多田 祐汰(3年)が放った打球は三塁手が捕り切れずそのままレフト前に抜けるかと思われたが、素早くその後ろに回って好捕すると素早い送球で間一髪アウトにしている。
打者走者としては6、7回に送りバントをし、このときの一塁到達タイムが4.22秒、4.18秒という速さ。3回戦の青森山田戦で二塁打を放ったときには今大会トップクラスの7.77秒で二塁に到達している。各塁到達には不利な右打者であることを考えると「大会屈指の俊足」と評価してもいいと思う。
(文=小関 順二)
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