聖光学院vs聖心ウルスラ

聖光学院（福島）vs聖心ウルスラ（宮崎）

　3対0とリードした3回表、聖心ウルスラの攻撃には首を傾げた。2番園田 玲久（2年）、3番宮原 倭大（3年）の連続安打で無死一、二塁のチャンスを迎えると聖心ベンチは4番矢野 偉吹（3年）にバントを指示し、これがキャッチャー前に転がり、2－5―3の併殺になってしまう。2回に先制した場面では矢野のヒットのあと5番請関 史也が三振、4回にも6番柳田 駿兵（3年）がヒットで出たあと7番打者が死球と強硬策に出ている。どうして3対0とリードした3回、打席に4番打者が立っているときにバントを命じたのか。

　高嶋 仁氏が監督に就任してしばらく、智弁和歌山は甲子園で勝てなかった。当時の高嶋采配はバントより積極に打って行く作戦が多かった。それがバントを交える采配に変えると常勝軍団に様変わりした。以前取材したとき、バントをしなかったのは次打者に信頼が置けなかったためだが、選手の成長によりバントで得点圏に送れば次打者が返してくれると思えるようになりバントも交えるようになったと話してくれた。

　それから数年後のある年の甲子園大会でのこと、得点機に4番打者がバントをしなかったことがある。それを高嶋監督に指摘すると「3、4番にバントをさせるようなことはしない」と一喝された。それがずっと頭にあるので3、4番のバントを見ると拒絶反応が起きてしまう。

　守りでは聖心ウルスラのバッテリーにミスが目立った。先発した戸郷翔征（2年）の暴投が3つあり、このうちの2つは失点に結びついている。5回裏、聖光学院は2番松本聖也（3年）がヒットで出塁するとすかさず二盗し、一死後、4番打者の3球目に戸郷が暴投して走者は三進。二死後、今度は5番打者の3球目に暴投して三塁走者が生還し、勝ち越されてしまう。

　この場面をさらに詳しく説明すると、ボールが後ろに逸れた瞬間、投手の戸郷は三塁走者のホーム生還に備えてホームに走らなければならなかったが、ベース上にはいなかった。こういう緩慢プレーはチームの志気に関わることである。ついでにいうと、8回裏のバント処理も雑だった。この雑なバント処理のあとの二死三塁の場面で、今度はキャッチャーの赤木優太（3年）がパスボールし、痛恨の5点目を与えてしまう。

「もし」や「たら・れば」は勝負事には禁句だが、あまりにもバッテリーミスが続いたので、「もしバッテリーに緊張感があったら」と言いたくなった。付け加えると、2年生の戸郷は来年のドラフト候補である。将来の夢にプロ野球があるならば投げるだけでなく、ディフェンス面にも気を付けるべきだし、1つのプレーがナインに与える影響にも気を回すべきである。

（文＝小関 順二）

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