花咲徳栄vs日本航空石川
花咲徳栄、全国トップクラスの対応力を示す
花咲徳栄(埼玉)vs日本航空石川(石川)
改めて花咲徳栄の対応力が光った試合となった。日本航空石川のエース・佐渡裕次郎に対し、待球作戦。140キロ前後の速球、縦横のスライダー、チェンジアップ。いずれも低めに集めるが、すべてそれを見極め、ボール球にしていること。いきなり主将の千丸剛(3年)の適時打で1点を先制。その後、敵失や押し出しなどが絡み、一気に5点を先制する。この回、佐渡が投げた球数は55球。
球数を投げさせることに成功したが、佐渡はこの後、インサイド攻め、さらにカーブを使い分けるなど花咲徳栄打線を打ち取っていった。
花咲徳栄の先発・綱脇慧(3年)は内回りのテークバックから指先にしっかりとリリースできる好投手で、常時135キロ~140キロだが、回転数が高く、球質も良い。さらにスライダー、カーブ、チェンジアップのような落ち方をするツーシームを投げ分け、7回一死まで無失点に抑える投球。すべてにおいて高いクオリティを誇る投手で、高卒プロというタイプではないが、大学・社会人でうまく肉付けしていけば、145キロ前後の速球、多彩な変化球を投げ分けて勝負する実戦派右腕へ成長する可能性を秘めている。
またこの試合で花咲徳栄の4番野村 佑希(2年)に待望の一発が飛び出した。詰まりながらも持って行った当たりは見事であった。
綱脇は7回裏、一死満塁のピンチを招いたところで降板。ここで登板したのは、最速149キロ右腕・清水達也(3年)だ。清水は、常時145キロ前後のストレートで勝負するが、押し出しと1番安保 治哉 (3年)に2点適時打を打たれ、3失点。しかし清水が良かったのは冷静なマウンド捌きで、後続を抑えたこと。
8回以降も、最速148キロを計測したストレートを軸にねじ伏せる投球。リリーフ限定とはいえ、145キロ以上を計測したのは、10球以上。高校生としては破格のアベレージのスピード。さらに威力もあり、木製バットだったら、簡単に折れてしまうぐらい力強さがある。縦スライダー、スプリット、カーブを投げ分け、追う日本航空石川打線を抑え込んだ。ドラフト指名候補として大きなアピールを見せた。
日本航空石川で良かったのは2番手・大橋修人(2年)が好投。始動からフィニッシュまで一連の動作が綺麗な右の本格派。その大橋が、なんと常時130キロ後半~常時143キロを計測。3番西川愛也(3年)に145キロを計測。ストレートの威力もあり、スライダーの切れも良い。来年のドラフト候補として期待したい右腕だ。しかしエラーが重なり、3失点とほろ苦い甲子園デビューとなった。花咲徳栄は140キロを超える投手2人にしっかりと対応して、9得点。この対応力の高さ、力強さは全国トップクラスであることを示した。
それにしても、来年の北信越は、投手のレベルが高い。今回した紹介した大橋を含め、他では最速148キロ右腕・鈴木裕太(日本文理)、直江大輔(松商学園)、最速148キロ左腕・山田龍聖(高岡商)の4人は甲子園で140キロを超える速球を投げ込んだ。しかも4人ともほろ苦い結果に終わっている。これは甲子園が与えた試練だと思って、大きく化けてほしい。
(文=河嶋宗一)
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