仙台育英vs滝川西
仙台育英が魅せた野球の練度の高さ
仙台育英(宮城)vs滝川西(北北海道)
2年前の甲子園準優勝の仙台育英と滝川西の一戦。選手のポテンシャルは変わりないないが、なぜ15対3と大差がついたかといえば、技術の練度の高さ、守備力の高さが大きく分けたのではないだろうか。
まず先制したのは仙台育英。3番山田利輝(3年)がスライダーを見逃さず、ライトスタンドへ飛び込む2ランホームランで2点を先制する。さらに2回表には長谷川拓帆(3年)が3ランを放ち、2回までに5対0と大きくリードする。仙台育英の打撃は高度だった。滝川西のエース・鈴木 愛斗(3年)は、右上手から、常時130キロ~133キロの速球、スライダー、カーブ、新たにフォーク、チェンジアップを投じていた。鈴木はフォーク、チェンジアップの割合を増やして、勝負していた。制球力の高さ、変化球の各種の精度の高さを見ても好投手と推していい投手だ。
しかし仙台育英ナインはチェンジアップを振ることなく、しっかりとボールを見極めながら、鈴木が勝負できるボールをなくし、5回まで7得点を奪った。まさに強者の戦いであった。仙台育英は、6回表から登板した高島 泰都も攻略。高島の持ち味はストレート。180センチ73キロと上背があり、テークバックをコンパクトにとって、鋭く腕を振っていく投球フォームから繰り出す回転数が高いストレート。将来的には、145キロも見込める逸材だが、スライダー、カーブの精度が低く、そうなるとストレートを投げるしかない。しかし仙台育英の打撃陣は滝川西バッテリーの攻めを見抜いて、高島から5得点を奪った。
7回表途中から登板した3番手の奥村翼(3年)も荒削りな投手で、投球フォームを見ると、力いっぱい腕を振って勢い重視のフォームから常時130キロ後半の速球を投げ込む。打っても打撃センスは高い選手で、こういう選手がライトに控えているのだから、滝川西は公立校ながら選手のポテンシャルの高さは素晴らしいものがある。冒頭で述べたように、まだ強豪校と渡り合えるだけの技術、投球術はない。奥村は1イニングを投げて2失点だが、球数は40球。どれだけ仙台育英の打撃陣に苦しんだのかが分かる球数の多さである。
今年はエース・長谷川拓帆のピッチング、主将でショートストップの西巻賢二の攻守の総合力の高さがクローズアップされるが、選手全体の力量が高い。本塁打を放った山田や、右中間へ鋭い打球、甘く入ればスタンドインするパワーを持ち、俊足、スローイング技術の高さが光る杉山拓海(3年)など好選手が多い。どの選手も無駄なボールに手を出さず、そして甘く入れば、あっという間に外野の間を抜く打球を打ち、そして守ってはそれぞれの選手が切れの良い動きから軽快な守備を見せていた。
一方、敗れた滝川西は最後まで全力疾走を徹する姿勢は素晴らしく、公立校ながらポテンシャルの高い選手が揃ったチームだった。しかし守備面でエラーがあり、それが大きな点差を開いた要因にもなった。改めて全国クラスの強豪校である仙台育英の野球を甲子園で体感できたことは、滝川西の将来を考えると、収穫ある試合だったといえる。
(文=河嶋宗一)
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