試合レポート

広陵vs中京大中京

2017.08.11

タレント揃いの名門校同士の対決は広陵が制する!

広陵vs中京大中京 | 高校野球ドットコム
中村奨成(広陵) ※写真=共同通信社

 改めて1回戦で対戦するには、もったいないゲームだった。それだけ両チームの選手のレベルが非常に高かったからだ。

 まず流れをつかんだのが、中京大中京だった。1番伊藤 康祐 (3年)がバックスクリーンへ飛び込む本塁打で1点を先制。伊藤はU-18代表候補に選ばられているが、この試合で、自分の実力を発揮した。スクエアスタンスで構え、力みなくボールを待つことができており、インサイドアウトでボールで呼び込んで、広角に鋭い打球を連発できる選手で、打撃技術の完成度が高い。広陵平元 銀次郎の速球、変化球にも立ち遅れることなく、弾き返せる能力の高さはさすがだ。さらに、二死三塁から内野安打で1点を追加した中京大中京

 中京大中京の先発・磯村 峻平(3年)が6回一死まで2安打、無失点に抑える素晴らしい投球を見せた。独特の踏み出しから、左スリークォーター気味に腕を振っていく投手で、常時135キロ~140キロ(最速141キロ)の速球は横の角度で決まっており、さらにキレのあるスライダーが低めに集まり、甘い球が少なく、強打の広陵打線に対して、うまい攻めで、抑えることができていた。これまでの投球と比べるとだいぶ安定感が出ており、3年間でしっかりと成長した跡を見せてくれた。

 好投の磯村に代わって、マウンドに登ったのが背番号1の香村 篤史(3年)。香村は184センチ83キロと恵まれた体格をした投手。香村はだいぶ恵まれた体格を生かせるようになり、リストアップ、テークバック、リリース、体重移動と一連の流れが実にスムーズとなった。

 右上手から投げ込む直球は、常時140キロ・最速143キロを計測。球速表示だけではなく、回転数も高く、万全の投手リレーで広陵打線を封じるプランだったが、3番中村 奨成(3年)が142キロのストレートを押し込み、ライトスタンドへ本塁打。中村の本塁打で勢いに乗った広陵打線は4番加川 大樹 (3年)のライトへ二塁打を打ち、5番高田 誠也 (3年)の左前適時打で同点に追いつく。香村の速球は全く悪くなかった。

 打った中村の技術をほめるしかない。あの右打ち技術はまるで同じ広陵OBで、巨人・日本ハムで活躍した二岡 智宏さんを思い出させる一打であった。さらに抜群の強肩。小林 誠司二世と呼ばれている中村だが、打撃は二岡、肩は小林を彷彿させる選手といったところだろう。またフレーミング技術も高く、中村のキャッチングからストライクにしたボールも数多くあった。総合力とスケールを兼ね備え、そして初の甲子園でこの大活躍。ドラフト上位候補として評価を高めた試合となった。


 中京大中京は香村が降板し、144キロ左腕・伊藤 稜(3年)が登板したが、勢いに乗った広陵打線を止めることができず、一死三塁から大橋 昇輝(3年)のレフトへのタイムリーで、逆転に成功する。

 この逆転劇で勢いに乗った広陵は7回表、途中出場の2番佐藤 勇治(3年)のレフトスタンドへ2ランを放ち、2点を追加。二死二塁から5番高田がセンターへ適時二塁打を放ち、6対2と4点差。

 伊藤は春の大会と比べるとかなり良くなっていた。小さなテークバックで、しっかりと肘を上げて、横回転を生かした腕の振りで投じる速球派スリークォーター。左腕でありながら、常時130キロ後半~144キロを計測。速球の勢いは素晴らしく、高校生としては上位にランクインする力量を持った投手だ。だが気になったのは、ストレートの割合が非常に多いこと。広陵打線はストレートに狙い球を絞り、8回表には1番高田 桐利 (2年)の適時打、2番佐藤の犠飛で2点を追加し、ここまで3安打の3番中村が、外角高めのストレートを捉え、ライトへ飛び込む二打席連続本塁打で、10対2と大きく点差を広げた。これで伊藤稜は降板。もともとスライダー、ツーシームを得意にする投手なだけに、変化球をうまく生かせられなかったのはもったいなかった。

 中京大中京の4人目のマウンドに登った浦野 海斗(3年)。180センチ79キロの右の本格派だ。伸びやかなフォームから繰り出すストレートはコンスタントに140キロ前後を計測しており、さらに120キロ前後のスライダーを織り交ぜる右投手で、さらに8回裏にタイムリーを打ったように、打撃センスも非常に高い。2009年の甲子園優勝投手となった森本 隼平(法政大卒)を思い出させる投手だ。来年のドラフト候補として期待が持てる投球内容だった。

 後がない中京大中京は9回裏、一死から登板した森 悠祐(2年)に襲い掛かる。森は右上手から常時140キロ~147キロを計測し、速球の勢いは素晴らしく、浦野とともに来年のドラフト候補として期待したい右腕だ。

 しかし森は大舞台の緊張からか制球が定まらず、9回裏には一死一塁から諸橋 駿(3年)の中越え適時二塁打でまず1点を返され、一死満塁となって森は1アウトも取ることができず、降板。マウンドに登ったのは、7回裏からリリーフとしてマウンドに登った。山本 雅也。山本は二死満塁から押し出し、1番伊藤康のライトへのタイムリーで6対10と4点差に迫られるが、自分の間合いで投げる冷静なピッチングで、後続を抑え、初戦突破を決めた。

広陵にとっては苦しい試合展開だったが、広島大会から好リリーフを見せていた山本は好投手。平元がいなければ、強豪校でもエースになれる投手。左スリークォーターから常時130キロ~130キロ後半の速球を投げ込み、120キロ前後のスライダー、120キロ前後のシュートを低めにきっちりとストライクを取れる高校生左腕はそうはいない。

 勝利した広陵は、優勝候補・秀岳館と対戦。次も激戦を期待したい。

(文=河嶋宗一

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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