日本航空石川vs木更津総合
日本航空石川が木更津総合・山下を攻略!9回二死から逆転勝利!!
上田 優弥(日本航空石川) ※写真=共同通信社
試合前に木更津総合のシートノックを見て勝利を確信した。シートノックの巧拙は実力の上下より練習量の多寡をよく表す。平均的評価の日本航空石川に対し木更津総合のシートノックは圧倒的だった。
試合が始まっても木更津総合の走攻守の充実が目立った。走については私が俊足の目安にしている打者走者の「一塁到達4.3秒未満、二塁到達8.3秒未満、三塁到達12秒未満」で比較したい。このタイムをクリアしたのは木更津総合の4人6回に対して日本航空石川は0人。これを見れば木更津総合が敗れるとは思えない。ここまでの試合で木更津総合より多くタイムクリアしていたのは松商学園の5人8回だけ。木更津総合の走力の充実がよくわかる。
ピッチャーはどうだろう。「大会屈指の左腕」と前評判の高い木更津総合の山下輝(3年)はこの試合でストレートの最速が144キロを計測し、平均的にも140~143キロを往来した。この高レベルの安定感はここまでの試合でナンバーワンである。変化球は縦・横のスライダーを使い分け、勝負どころで多投した縦変化のスライダーのキレは「大会屈指」の評価を納得させた。さらに100キロ台のカーブを交えて緩急も作れた。
日本航空石川の先発、佐渡裕次郎(3年)もよかった。ストレートが最速143キロを計測し、サイドスローらしく横変化のスライダーにツーシームらしき126、7キロで落ちる球も交え、よさが目についた。この佐渡を木更津総合はよく捉えて2回に2点、4回に3点を奪い、5対1というスコアは7回終了まで続いた。
2回の2点は7番山下から1番山中稜真(2年)までの4連続安打(山中だけ二塁打)で挙げたもので、4回の3点は二死後、2番細田悠貴(2年)のヒットから始まり、3番峯村貴希(3年)のタイムリー、4番芦名望の2ランで挙げた。こういう展開も含めて木更津総合が終盤に失点を積み重ねて敗れるとはとても思えなかった。しかし野球ではそれが時として起こる。
8回表、日本航空石川は1番安保治哉(3年)から単打の3連打で1点返し、5対2のスコアになったところで「ひょっとしたら」と思わせた。安保は107キロのカーブ、2番三桝春樹(3年)は142キロのストレート、3番原田竜聖(2年)は120キロのツーシームかスライダーといった具合に、異なった球種を捉えているのを見て、山下のクセを見破ったのかな、と思わせたからだ。そして9回、日本航空石川は二塁打1本と5本の単打をつらねて4点を奪い、奇跡とも言える逆転劇を実現してしまうのである。野球は本当に何が起こるかわからない。
ちなみに、日本航空石川の佐渡投手は卒業後、硬式野球を続けないという。地元の銀行に就職して軟式で野球を続けるのだという。もったいない話だが、最後のひと花を咲かすという視点で見ると、この日の力投は納得できた。
(文=小関 順二)
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