明徳義塾vs日大山形
明徳義塾の守備力が日大山形の強打を上回る
日大山形vs明徳義塾
両者の執念が見えた試合だった。2010年から夏7連覇中の明徳義塾。やはり試合運びの巧さと守備力の高さを見せた試合となった。
試合は序盤から動いた。まず1回表、明徳義塾は1番菰渕 太陽(2年)が右中間を破る二塁打で無死二塁のチャンスを作る。一死三塁から4番谷合 悠斗(2年)の適時二塁打で1点先制。しかし日大山形も1回裏、一死二塁から3番斎藤 史弥(2年)の左横線へ抜ける適時二塁打ですかさず同点に追いつく。
だが明徳義塾は2回表、6番久後 健太(3年)が真ん中高めに入ったスライダーを逃さず、右中間を破る三塁打。続く7番筒井 一平(3年)も真ん中高めに入ったカットボールを逃さず、右前適時打で勝ち越しに成功する。
その裏、日大山形は二死二、三塁から第1打席で安打を放っている3番斎藤が今度はセンターへ2点タイムリーを放ち、逆転する。斎藤は2年生としては攻守ともにかなりハイレベルな二塁手である。明徳義塾の左腕・北本佑斗に対し、体が開かずに逆方向へ打ち返せる打撃技術の高さは折り紙付きだ。守備は、動作の1つ1つの切り替えしが速く、センターよりの打球、ライト線寄りのゴロを確実に打球を捌くことができていた。将来的には山形県を代表するセカンドに成りうる逸材ではないだろうか。
1点を追う明徳義塾は6回表、二死二塁から7番筒井が再び適時打を放ち、3対3の同点に追いつく。同点打に追いついた筒井が攻守に渡って冴えた動きを見せていた。まず右打ちが上手く、2本のタイムリーともに、体が突っ込まず、インサイドアウトで振り抜いた打撃は素晴らしい打撃だった。そしてリード面でも冴えわたる。山形大会で、打率.391、3本塁打、11打点と大活躍を見せた舟生大地に対して、徹底としたインコース攻めで、打撃をさせなかった。また2安打を放った鈴木琉生に対しても、シュートを使いながらタイミングを外すピッチングで、打たせなかった。
延長12回までもつれた試合は明徳義塾が谷合の勝ち越し内野安打と5番今井涼介の適時打で3点を勝ち越し、逃げ切りに成功。なんといっても、筒井のリードに応えた北本と2番手の市川悠太のピッチングが大きかった。特に市川のピッチングは非常に大きかった。体を沈み込んで勢い良く腕を振るピッチングは、躍動感が伝わり、常時130キロ後半~140キロ前半のストレート、切れのあるスライダー、130キロ後半のシュート、110キロ前後のチェンジアップといずれも精度が高く、横の揺さぶりで、強打の日大山形打線を封じたピッチングは見事で、次の前橋育英戦へ向けて弾みが付くピッチングとなった。
敗れた日大山形は、5打数2安打の1番鈴木が面白い選手だ。スクエアスタンスで構え、両膝をまげて重心を低く構える姿は力みがなく、バランスが取れた構えをしている。そこから始動を仕掛け、小さなステップから、内回りのスイング軌道でボールを捉え、打球の1つ1つが鋭い。1年生から山形県を代表する強打者として注目されたが、左投手と対しても決して形が崩れない打撃フォームの良さは注目。
そして守備でも魅せた。右中間へ飛んだ打球をしっかりと追いついて、ランニングキャッチ。また処理が難しい真後ろの打球に対しても好捕。守備範囲の広さ、一歩目の速さ、準備の良さを見せつけた。そして、6回表には一死二塁から6番久後健太が放った中前安打からダイレクト返球で捕殺。攻守でレベルの高いパフォーマンスを見せた。野手としての総合力、ポテンシャルの高さ、意識の高さといい、ここまで登場した外野手の中でもレベルが高い。初戦で姿を消すのがもったいない選手だった。
(文=河嶋宗一)
注目記事
・第99回全国高等学校野球選手権大会 特設ページ