試合レポート

浦和学院vs聖望学園

2017.07.23

浦和学院、1安打完封リレーで準決勝進出

 曇天の中行われた大宮公園球場ベスト8の第一試合は、春季埼玉県大会の初戦で浦和学院をあと一人まで追い詰めた聖望学園対その後関東王者となる浦和学院の再戦となる。

 先発は、聖望学園はエースの西澤海(3年)、一方の浦和学院は、エース佐野涼弥(2年)かと思われたが、4回戦の春日部東戦以来の先発となる長身の2年生右腕・渡邉勇太朗で試合が始まる。

 試合は序盤から積極的な攻めを見せる浦和学院がやや優勢に試合を運ぶ。

 浦和学院は初回、西澤の立ち上がりを攻め、先頭の矢野壱晟(2年)が初球の直球を捉え、レフト前ヒットで出塁すると、続く杉山翔(3年)の所で送るかと思われたが、ベンチはバスターエンドランを仕掛ける。結果はショートゴロとなるが走者は進み一死二塁とする。二死後、4番・蛭間拓哉(2年)は歩かされ二死一、二塁とすると、続く山本晃大(3年)はレフトへ大きな当たりを放つが、アウトとなり無得点に終わる。

 一方の聖望学園は、この日浦和学院・渡邉のスライダーに苦しめられる。4回まで3番・津田将治(3年)の1安打のみに抑えられるなど、スコアリングポジションにすら走者を進められない。

 先制したのは浦和学院だった。3回裏、この回先頭の森川怜(3年)が左中間へ二塁打を放つと、中継がやや乱れたのを見て、持ち味である俊足を活かし一気に三塁を奪い無死三塁とする。すると、続く矢野がセンター前へタイムリーを放ちまず1点を先制する。さらに浦和学院は、続く杉山がきっちりと送り一死二塁とすると、二死後、4番・蛭間を迎えるが、ここは西澤の踏ん張りに遭い三振を奪われ1点でこの回の攻撃を終える。

 先制点を挙げ勢いに乗る浦和学院は、4回裏もこの回先頭の山本がレフト前ヒットを放ち出塁する。だが、続く秋山拓海(3年)の送りバントがピッチャー前の飛球となる。この打球に西澤が飛びつき好捕すると、一走・山本も飛び出しており併殺になる。

 浦和学院は5回裏にも一死から森川が四球を選び出塁し、続く矢野の所で二盗を狙うが、これはやや見え見えであったか、聖望学園バッテリーにやや外され刺されてしまう。直後に矢野がセンター前ヒットを放つなど中盤はややチグハグな攻撃が目立つ。さらに西澤の粘投もありなかなか追加点を奪えない。

 だが、頼みの聖望学園打線は、中盤以降も浦和学院・渡邉のスライダーにタイミングが合わず、初回の1安打のみに抑えられ1対0のまま試合は終盤へ進む。


 迎えた7回裏、浦和学院は一死から7番・本田渉(3年)がライト線へ二塁打を放つと、ここで浦和学院ベンチは勝負をかける。先発の渡邉に代打・桑野流佳(3年)を送る。桑野は期待に応え左中間へタイムリー二塁打を放ち、貴重な1点を奪う。

 さらに一死二塁、この日西澤にタイミングの合っている9番・森川、1番・矢野を迎えるという場面で、まずこれ以上失点のできない聖望学園ベンチが動く。西澤を一旦レフトへ下げ、2番手に左腕・高橋海(3年)をマウンドへ送る。だが、これがやや誤算だった。高橋は森川こそ抑えるが、続く矢野にストレートの四球を与え、二死一、二塁で2番・杉山を迎える。

 すると今度は浦和学院ベンチが動く。カウントを取りに行った高橋に対し、杉山の所でエンドランを仕掛けると、これが見事に決まり杉山がセンター前へタイムリーを放ち試合の大勢を決める3点目を奪う。動揺した高橋は、続く家盛陽介(3年)にも死球を与え、二死満塁とした所で結局マウンドを再び西澤に譲る。ここは西澤が4番・蛭間を抑え、事なきを得るが、この日の浦和学院にはこの3点があれば十分であった。なぜなら、後ろにエース佐野を残しているからだ。

 8回からマウンドに上がった佐野は、イニング間の投球練習でワンバウンドばかりを放り、やや会場がざわめくが、先頭の代打・工藤奨平(3年)から三振を奪うと、その後も危なげない投球を見せる。最終回、一矢報いたい聖望学園は二死一塁から5番・大野隼(3年)がセンターへ大飛球を放つが、最後はセンター山本の好捕に遭い万事休す。浦和学院が、3対0で聖望学園を退け準決勝へ駒を進めた。

 まず聖望学園だが、西澤は7安打を浴びながらも要所を締め、強打の浦和学院打線を4番・蛭間をノーヒットに抑えるなど最少失点に抑え、エースの踏ん張りを見せていた。だが、今大会は他の投手が振るわず、その後の大会も西澤一人で投げざるを得なかった弊害が終盤の継投の場面で垣間見えてしまった。また、この日は打線も頼みの主砲・島村京佑(3年)がノーヒットに終わるなど沈黙した。

 先発・渡邉を想定していなかったのか、渡邉のスライダーに全く合わず、その後、8回から満を持して登板した佐野と二人の前に、結局1安打完封リレーを食らってしまった。新チームではこの日出番のなかった坂本らフレッシュな顔ぶれとなりそうだが、元々投打に力のある下級生がいるチームであるだけに打倒浦和学院へ再起を図りたい所であろう。

 一方の浦和学院は、渡邉の好投に尽きるであろう。彼が7回まで好投したことにより、明日連戦となる準決勝へエース佐野の負担も最小限に抑えられた。そもそも今日の出来であれば、明日、渡邉の連投も考えられ、対戦相手が先発を絞れない状況も作れたのは大きい。また、打線もとにかくファーストストライクを狙う積極的な姿勢が見られ、西澤にプレッシャーをかけ続けた。

 4番・蛭間がこの日やや振りが大きくなり、ノーヒットに終わったことと、中盤ややチグハグな攻めでなかなか試合を決められなかったことは反省材料だが、元々投手陣、守備力、機動力は計算できるだけに接戦でも負けにくいチームとなっている。あとは、佐野が突然乱れる事でもない限り、準決勝も浦和学院の優位は揺るがないであろう。

(文=南 英博

浦和学院vs聖望学園 | 高校野球ドットコム 全国各地の大会結果や試合レポートはここでチェック!
夏の大会特集ページ

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.05.04

【春季愛知県大会】注目の師弟対決の決勝、享栄が中京大中京を下して8年ぶり8回目の優勝

2024.05.04

1500人近くの中学生が肩肘検診を一斉に受ける!ポニーのお祭り行事・ポニーフェスタは今年も大盛況!

2024.05.04

【新潟】東京学館新潟、糸魚川がコールド勝ちでベスト16入り<春季県大会>

2024.05.04

【神奈川春季大会】東海大相模・藤田琉生が涙の1失点完投!昨秋準決勝で敗れた横浜相手にバットでもリベンジ果たす!

2024.05.04

【大阪】大阪桐蔭、大体大浪商などがベスト16で夏シード獲得、履正社は2年連続ノーシード<春季大会>

2024.04.29

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.29

【福井】福井工大福井、丹生、坂井、美方が8強入り<春季県大会>

2024.04.29

【春季埼玉県大会】今年の西武台はバランス型!投手陣の完封リレーで初戦突破!

2024.04.29

東海大相模の149キロ右腕・福田拓翔が6回10奪三振の快投!「甲子園で150キロを投げたい」とセンバツV・健大高崎の石垣をライバルに!

2024.04.29

【石川】金沢、遊学館がコールド勝ちでベスト16入り<春季県大会>

2024.04.22

【春季愛知県大会】中部大春日丘がビッグイニングで流れを引き寄せ、豊橋中央を退ける

2024.04.21

【愛知】愛工大名電が東邦に敗れ、夏ノーシードに!シード校が決定<春季大会>

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.21

【兵庫】須磨翔風がコールドで8強入り<春季県大会>

2024.04.22

【鳥取】昨年秋と同じく、米子松蔭と鳥取城北が決勝へ<春季県大会>