高松北vs三木
高松北の「絶体絶命」を救ったホームスチール
守備では各打者の打球傾向を探究してのポジショニングで数多くのアウトを奪い、打撃では1回裏に3安打とスクイズを交えて3得点。8回裏にも相手失策で抜け目なく4点目。そして9回表は二死走者なしから安打・失策・安打で3対4とされるも二死二、三塁。三木は直前の練習試合で6対1で高松第一に快勝した展開と同じく、賢く試合を進めていた。
その原動力となったのは高松商では部長職に留まらない名参謀として一昨年秋の四国大会優勝・明治神宮大会制覇、昨年センバツ準優勝に大きく貢献。4月から香川三木に転任し「1勝することの楽しさを教えている」犬伏 英人部長と谷 豊監督のトロイカ体制。加えて5年ぶりの夏1勝を目指す選手たちも「2」を背負い、低めにボールを集めていた先発・柾木 剛(3年・176センチ80キロ・右投左打・三木町立三木中出身)を中心に、その意図と目的をよく理解し、「打倒・高松北」作戦は99%成就していた。
しかし。絶体絶命の縁にいた高松北の三塁走者にはジョーカーがいた。リードオフマンを張る牧野 恭平(3年・遊撃手・180センチ69キロ・右投左打・香川県立高松北中出身)。前の打席でも中前打でセンターがジャックるすると躊躇なく二塁を奪った韋駄天は、2ボール1ストライクからの4球目。猛然とホームへ向かって走り出した。誰もが想像できなかったホームスチールである。
香川三木・柾木もこれにすかさず反応。捕手がタッチしやすい位置へ低めにウエストする原則を守りタイミングはタッチアウトまで持ち込んだが……。キャッチャーミットからはボールがこぼれ落ちていた。次の瞬間、四国コカ・コーラボトリングスタジアム丸亀は驚きが混じった歓声と悲鳴に包まれた。
これで流れは変わった。香川三木は以降12回裏まで三塁を踏めず。そして13回表。高松北は無死三塁から途中出場の7番・日隈 滉太(2年・捕手・173センチ63キロ・右投右打・高松市立屋島中出身)が勝ち越しとなる左前適時打を放つと、打者9人で4得点。その裏、香川三木は221球を投げた柾木の気迫に応えんと、2点を返すも届かず。今治明徳(愛媛)2年時に愛媛大会ベスト8、亜細亜大では1年春から神宮登板を果たし、社会人・東芝府中でもプレーした父・一彦さんを彷彿とさせる土壇場での制球力・スタミナが光った左腕・小越 晴渚(3年・171センチ72キロ・左投左打・高松市立屋島中)の169球13安打2死球8奪三振完投により、高松北は3時間24分にわたる死闘を制した。
挨拶を終えるとホームベース上で握手をし、健闘を称えあう両校。かくして香川三木から賢く戦うことの大事さを学びつつ1回戦6試合の最後の勝者となった高松北の2回戦は、7月15日(土)四国コカ・コーラボトリングスタジアム丸亀で行われる大会第6日・第1試合。対戦相手は高松東である。
(レポート=寺下 友徳)
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