作新学院vs中央学院
コールド勝ちに結びつけた作新学院の走塁
今夏、54年ぶりに甲子園大会を制した作新学院だが、このチームのベンチ入り18人中、下級生は2人。このうち、鈴木萌斗(外野手)が決勝の北海戦で4回打席に立ち、3打数2安打と結果を残したが、もう1人の添田真聖(内野手)は代走から三塁の守備位置についただけで、打席には立っていない。当然、新チームの経験値は低い。
経験の浅さはバッティングに表れていた。1回表、相手のエラーに3安打を絡めて2点を先制したが、なお一死一、二塁の場面で6番打者が内野ゴロを打って併殺。2回も7、8番が死球で無死一、二塁とするが9番打者のショートゴロで併殺。二死から1、2番が長短打をつらねて2点を追加したがちぐはぐさは否めない。作新らしさを発揮したのは5回からだ。一死から死球、相手投手の暴投などで二死三塁とし、6番打者の三塁ゴロエラーで5点目を奪った。優勝校の名残のようなものが感じられたイニングだった。
さすがだったのが作新学院各打者の走塁である。1番鈴木萌斗(中堅手)は2回表、二死三塁の場面でレフト前ヒットを放ち、このときの一塁到達が4.26秒。続く2番添田真聖(二塁手)が左中間に三塁打を放って、このときの三塁到達が11.87秒、ともに私の中では俊足と認められるタイムである。7回には3番中島淳(2年・三塁手)が左中間を破って二塁到達が8.07秒、そのあとに2本のヒットと相手エラーが続いて4点を加点、7回コールド勝ちにむすびつけた。
作新学院が全国で暴れ回るには各打者のより一層のパフォーマンスの向上が求められるわけだが、投手も今のままでは物足りない。先発した左腕、大関秀太郎(2年)は172センチの上背のなさが球威に反映されている。身長はいいとして物足りないのは70キロの体重。この試合で計測した131キロのストレートにボリュームを加えるためには筋力とともにウエイトアップは欠かせないと思う。
昨年の優勝メンバーを見ると今井達也(西武1位)が180センチに対して72キロ、一塁手兼145キロ右腕の入江大生も186センチに対して79キロ。ウエイトトレーニングとプロテインで鎧のような肉体を作り上げる昨今のウエイト信仰に小針崇宏監督は一石を投じようとしているのかもしれない。
負けた中央学院は拙攻が祟った。1回はヒットと相手エラーで一死一、二塁のチャンスを作るが一塁走者がピッチャーのけん制で憤死。2回が一、三塁で還せず、3回が1点還してなお走者が二塁にいたが6番打者が一塁フライ、4回が無死一、三塁で得点できず、と拙攻が続いた。各打者の奮起とともに、1人しかタイムクリアできなかった打者走者の走塁に対する意欲も向上させてほしい。
(文=小関順二)
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