横浜vs浦和学院
積極的な攻撃で浦和学院を攻略した横浜
神奈川横浜は積極的な攻撃で浦和学院の1年生左腕、佐野 涼弥を攻略した。象徴的だったのが2点目を挙げた3回表の攻撃で、ストライクの見逃しは19球中1個しかなかった。その神奈川横浜の中にあっても4番の万波 中正(1年・右翼手)は初球を打って1回に内野安打、3回にレフト前ヒットを放っている。変化球打ちに課題があり、いわゆるクリーンヒットは1本もなかったが、空気を裂くようなフルスイングはチーム内の膠着した空気を一変させる力を持っている。
この万波とクリーンアップを形成する3番増田 珠(2年・中堅手)は打つ形のよさでひときわ目立つ。構えたときグリップを肩の下あたりに置き、打つ直前(トップ)に少し上げる。これはボールを上から叩こうという意図で、下から煽って打ちに行く万波とは対照的である。
また中盤のときの守備にも非凡さがうかがえた。頭を越える打球を想定しているのか、背走して振り返る動きを何回も確認していた。このときの太陽はバックネット裏方向にあり、背走して振り返ったとき太陽が目に入る心配があった。準備のいい選手だと感心した。
浦和学院で注目したのは3番蛭間 拓哉(1年・右翼手)だ。1回裏には初球の108キロカーブをライト前に渋いゴロ安打、4回には1ストライクからの111キロカーブをライトスタンドにソロホームランを放り込んでいる。打者は総じて初球や2球目の緩い変化球で凡退するのを嫌がる。それが1回裏は初球、4回裏は2球目を打ってヒット、ホームランを打っているのだ。両校のクリーンアップを打つ1年生の思い切りのよさはさすがバッティングに定評のある両校である。
投手は浦和学院のほうが戦前は評判がよかった。神奈川横浜は中学時代に投手経験のある万波や増田を投手で起用するプランがあったというから、投手不足は深刻である。しかし、この試合では1年生左腕の板川 佳矢が10安打されながら要所を締める粘り強い投球で2失点完投を飾った。ストレートは最速135キロと速くない。縦変化のカーブ、スライダーを主体にした技巧に特徴があり、三振は3回の1個だけ。その代り1回裏の1死一、二塁、2回の1死一塁、4回の1死満塁、8回の1死一塁のピンチを緩急で翻弄、いずれも併殺で切り抜けた。
対照的に浦和学院の1年生左腕・佐野 涼弥はストレートの最速が138キロを計測したが、それが序盤は抜けまくり、縦変化のチェンジアップ、スライダーも低めに引っかかることが多かった。その結果、暴投・捕逸が3回、4回(2個)、5回に計4個あり、そのうちの2回が得点につながってしまった。自滅と言ってもいいだろう。
(文=小関順二)
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