八王子vs帝京
八王子・早乙女、我慢の投球で帝京を7安打完封
八王子勝利の瞬間
1回戦は明大中野八王子、2回戦は都立雪谷と強豪を撃破した夏の西東京大会優勝の八王子と、2回戦で二松学舎大附を接戦の末破った伝統校の帝京。このブロックは強豪揃いの激戦区であるが、3回戦も、緊張感のある試合になった。
帝京は松澤 海波、八王子は甲子園を経験した早乙女 大輝と、ともにエースが先発した。
帝京の松澤は1、2回と走者を2人出したものの、アウトは全て三振と、八王子打線をねじ伏せた。ただその一方で、2回を終了して47球と、球数が多かった。
八王子の早乙女は、毎回のように安打は打たれるものの、要所を締めて得点を許さない。帝京は強力打線だけに、八王子の安藤 徳明監督は、早乙女に「3、4点はやっていい」と言っていた。その気持ちの余裕が、腕がよく振れた投球につながる。
4回表八王子は1点を先制する。一死後7番雨宮 諒也が中前安打。8番早乙女の遊ゴロで二塁に進み、9番野村 悠仁の中前安打で雨宮が二塁から一気に生還する。ただ雨宮の生還は、タイミングはアウトで、捕手もタッチしていたと帝京側はアピールしたが、判定は覆らなかった。
これで八王子に流れが行っただけでなく、帝京・松澤の投球も5回で97球であり、球威も序盤ほどではなくなってきた。
松澤(帝京)
7回表八王子の3番高橋 裕汰の内野安打、4番安羅岡 塁斗の四球などで、一死二、三塁とし、打席には6番の櫻井 陸朗が入る。主将であり、甲子園を経験している櫻井は、1次予選は3番、本大会は1番を打っていたが、「気負いがあったので、楽に打たせようと、打順を下げました」と安藤監督が言うように、この日は6番であった。それが当たる。2ボール1ストライクからの4球目を叩くと、打球は左中間のフェンスを越える3ランになった。その後も満塁のチャンスが続いたものの、生かせなかった。
ただ八王子の早乙女には、4点は十分なリードであった。「夏よりは球が速くなった」と言う早乙女であるが、緩い球をより効果的に使えるようになり、早乙女のペースになる。
9回表も八王子は2本の安打と、8回から登板した帝京・仁田 龍也の暴投で1点を追加し、5-0で八王子が強豪対決を制し、準々決勝進出を決めた。
帝京にすれば、先取点の取られ方に納得がいかない部分もあるだろう。ただ、八王子の早乙女を打てなかったのも事実。エースの松澤は1年生ながら球威もあり、変化球も効果的に使っており、楽しみな投手だ。打線にも俊足の佐々木 俊輔など、力のある選手もいるし、この大会は負傷で欠場した岡崎心が戻れば、攻撃力は増すだろう。ひと冬越してのチームの成長を期待した。
八王子は、甲子園を経験してチームとしての成長を感じる。これまで、帝京のような伝統校相手だと、力を発揮できないことが多かったが、「自分たちの野球をやろう」という安藤監督の指示を、最後まで貫くことができた。また甲子園では、日南学園の森山 弦暉に抑えられたが、身長160センチの左腕の森山の投球をみて、同じ左腕の早乙女は、「低め、低めに丁寧に投げることが、参考になりました」と言う。甲子園では結果を残せなかったが、その経験は貴重であった。しかしながら、夏春連続出場に向けては、今後も厳しい戦いが続く。
(文・写真=大島裕史)
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