試合レポート

帝京vs二松学舎大附

2016.10.16

帝京・志田の決勝スクイズで息詰まる強豪対決を制す

帝京vs二松学舎大附 | 高校野球ドットコム

先発・松澤 海渡(帝京)

 全国区の知名度を持つ両校が、あまりにも早く激突。[stadium]神宮第二球場[/stadium]は超満員の観客で埋まった。試合はそうした期待にたがわぬ、手に汗握る大熱戦になった。

 帝京の先発は1年生の松澤 海渡二松学舎大附は左腕の市川 睦と、ともに背番号1のエースが先発した。

 1回表二松学舎附は、1番堀川 尚希の左前安打、3番平間陸斗の四球などで一死一、二塁とし、4番永井 敦士は三塁線をライナーで破る二塁打を放ち、まず1点。5番秋広 涼太は、センターへの大きな犠飛を放ち、さらに1点を加えた。これで二松学舎大附のペースになると思えたが、帝京の1年生エース・松澤は、「打たれても、球が甘かっただけと、切り替えました」と語る。

 すると3回裏帝京は、左前安打の佐々木 俊輔を一塁に置いて、4番金村 和広がレフトフェンス越えの2ランを放ち、同点に追いつく。

 しかしその直後の4回表、この回先頭の6番市川が左中間を破る三塁打を放つ。市川は投手になり、打順を下げているが、夏までは、外野手で中軸を打っていただけあり、打球は鋭い。続く7番畠山 大豪が死球、8番松江 京の左前安打で1点勝ち越し。9番永野 志弥の絶妙なバントが内野安打となり、無死満塁。それでも帝京のブルペンには、誰も投げていない。

 「1年生ですからね。代えるそぶりをみせると、ブルペンをみてしまう」と帝京の前田 三夫監督。この試合は、松澤に任せる覚悟で、試合に臨んでいた。結局この満塁のピンチは、内野ゴロの間の1点だけに抑えた。点差は2点に広がったものの、最小限の失点に抑えたことは大きかった。

 4回裏帝京は、この回先頭の8番志田 太陽が左中間の二塁打で出塁。暴投で三塁に進んだ後、2番佐々木の中前安打で生還し、1点差に迫る。その裏志田は、市川のセンターへの大飛球を背走し、フェンスにぶつかりながら捕球するなど、帝京に流れを呼ぶ、ラッキーボーイの役割を果たす。


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先発・市川 睦(二松学舎大附)

 6回表二松学舎大附の攻撃で、珍しいプレーがあった。二死後、二塁打の永野と、振り逃げの堀川を一、三塁に置いて、2番鳥羽 晃平は、一、二塁間に痛烈な打球。これが一塁走者の堀川に当たり、一度はアウトの判定が下った。しかしその前に、打球は一塁手のミットに当たってから、堀川に当たったのであり、アウトは取り消され、二松学舎大附が1点を追加した。

 流れが二松学舎大附に向かいかけたが、ここで帝京は、底力を発揮する。

 6回裏一死後、9番松澤の中前安打、1番高橋達哉のレフトライン上に落ちる二塁打で二、三塁とし、2番佐々木が右中間を破る二塁打を放ち、2人が還り同点に追いつく。

 ここで二松学舎大附は、市川に代わり岸川 海をマウンドに送る。岸川は3番田中 悠我に左前安打を打たれ、一死一、三塁のピンチを迎えるが、4番金村を遊ゴロ併殺で切り抜ける。

 けれども7回裏一死後6番田中 麟太郎が左前安打で出塁すると、続く山名 麗太朗との間でエンドランを仕掛け、これが右前安打になり一死一、三塁。ここで前田監督がさらに仕掛け、8番志田の初球をスクイズ。この日ラッキーボーイ的な存在になっている志田が落ち着いて決めて、決勝点を挙げた。

 8、9回は松澤が安打を許しながらも、落ち着いて投げて得点は許さず、このまま帝京が逃げ切った。

 松澤は、夏は太り気味の感じを受けたが、秋はかなり絞ってきた。その分球にキレが出てきたが、この試合に関していえば、「変化球のキレは今一つでした。でも低めに投げられたのは良かったです」と松澤は言う。

 息詰まる熱戦を制した前田監督は、「今日は我慢でした。円陣でも今日はあまり介入しませんでした」と言う。それでも、勝負どころではしっかり仕掛けるところは、さすがベテラン監督の采配の妙である。「こういう試合のものにできたのは嬉しい」と語る前田監督は、これからも続く厳しい戦いに向けて、気を締めた。

 一方、このところ秋季都大会は3年連続で準優勝であった二松学舎大附は、2回戦で早くも敗れ去った。選手層が厚く、高いレベルにあるチームであることは間違いない。ただそのチーム力を、いかに勝ちにつなげるか。ひと冬越して、どう成長するか。東京の高校野球の流れに大きな影響を与えるチームだけに、その成果に注目したい。

(文=大島裕史

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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